2008/01/20

中国料理におけるメニューの選択、コースの組み立て(その13)


 ここでおさらい。
 「エビチリ/干焼蝦仁」は、蝦を油通し(泡油)、もしくは湯引きか茹でて(汆水)、香味野菜を炒め、調味料、少量のだしを加え、蝦を戻して煮る(焼)。調味料入りのだしを煮詰め、蝦に煮絡める(干)。
 「麻婆豆腐」は、香味野菜と豚肉、もしくは牛肉をしっかり炒め(炒)、調味料、さらにはだしを加え、豆腐を入れてじっくり煮込む(焼)。
 「酢豚/咕嚕肉」は、主素材の豚肉を揚げ(炸)、湯引きか茹でる(汆水)、もしくは油通しした野菜などを炒め合わせ、くずあんをかける(溜/獻)。
 とまあ、野菜の和え物の前菜など以外、ほとんどの中国料理はいくつかの調理、調味過程を経て出来上がり。縁起を担いだ料理名、曰く言われのあるもの以外、中国語の料理名にそれが記されていますから、調理方法、味付けのあらまし、およその内容は解読、把握が可能です。が、「炒」、「炸」、「焼」といった用語一文字だけでは料理内容、調理方法や調味の解読は難しい。

 たとえば「炒」にも色々あります。「清炒」なら、たいていの場合、塩味の炒めもの。とはいえ、仕上げにだしを加え、煮含めるというのが一般的。「滑炒」なら、炒めた後で仕上げにくずひきあんでとろみをつけ、滑らかな舌触り、歯触りに仕上るという按配。
 「焼」(煮る)にしても、あらかじめ「炒」、「炸」「煎」、「煮(水煮)」、「汆水(湯引き、茹でる)」といった調理で下拵え。次いで「紅焼」ならたいての場合、醬油で味付けしただしで煮る。それが「干焼」の場合には、調味しただしは少量で、煮汁を煮詰め、煮含める、煮絡めて仕上る、といった按配ですから。
 さらに、香港、台湾、さらには中国本土と日本のそれを比べると、いささか事情が違ってくる。
 そう、決定的に違うのは、最後の仕上げのくずひき、とろみの付け加減です。
 私自身の体験に基づいた話ですが、香港、台湾、中国本土の北京、長江下流周辺では、それぞれの料理ごとにその加減、按配は見事に違います。素材の持ち味、調理、調味を生かしたもの。
 ところが、日本の中国料理のほとんどは、いかにものとろみの付け加減。これでもかとばかり言わんばかりに、みっちり濃厚。
 味の濃さ、脂っこさと共に、しっかりのとろみ加減があってこその中国料理、中華料理、というのは日本の中国料理、中華料理の長年の伝統であり、特徴でもありますから。日本の多くの中国料理店でのメニュー選びでは、その点を常に念頭に置いておかないとコースも組み立てられません。

 ということで、いよいよ次回からは「中国料理におけるメニューの選択、コースの組み立て」の実践編のはじまりです。
 で、画像は「清炒日本菠菜」。ほうれん草の炒めもの。ですが、ほうれん草は葉っぱの丸い西洋種とは違って、ぎざぎざの剣葉で桃色の根っ子が旨い日本ほうれん草。ほくほくの根っ子が旨い。その根っこを残して、軸付きの葉っぱそのまま、炒めたもの。
 目の前に運ばれた時、思わず、目が点になりました。香港などでは根っ子はもとより軸も切り落として葉っぱだけを調理というのが一般的、あたりまえですから。日本ならではのほうれん草の炒め物。いやはや驚いた。もちろん、ほうれん草の味の濃さ、甘い味わい、風味の豊かさにも、です。