2008/10/20

広東地方の郷土料理シリーズ、遅ればせながらの2008年「夏の巻」の5

続いて「紅炆水魚」。すっぽんの醤油煮込みです。
先の「夏の味」の時もそうでしたが天然のスッポンの入手が可能、ということでその好機を逃せない。
 養殖物のスッポンとは味、風味が違って、肉に締まりがあり、独得の香り、風味があります。漬物はじめ各種の具材とともに蒸す「八寶蒸水魚」も考えましたが、少しばかり凝りすぎ、行き過ぎかな?と躊躇して、オードックスで重厚な趣の「紅炆水魚」に決定。

 「まる鍋、と言うか、だし仕立てのスッポン鍋は食べたことがあるけど、こうやってぶつ切りを煮込んである、ってのははじめて、なんか豪快だね」なんて声も聞かれます。

 「香港じゃスッポン、それも「水魚」よりも大きな「山瑞」ですが、冬の野味の代表的な料理。日本だと、と言うか関西では暑気払いの料理、という感じなんですけど。でも、やっぱ、冬の料理ってイメージなのかな」と、私。

 骨付きの身、小骨のある手足にむしぶりついて、すっぽんの肉の独得の味、風味、くせのある旨さを堪能。しかし、なんといっても裙邊/縁側のペロペロ。コラーゲンの塊で、そのエッセンスをまんま味わう感じ。触感はとろとろというよりも、ぷりっとした弾力があります。身も、縁側も、最後の最後までしゃぶりつくしました。旨い。美味です。


 「あれ、この柔らかいの何?ぐじゅとした感じで、甘くて、美味しいんだけど!」なんて声が。
 「ン!? 大蒜の塊、じゃないですか?」と私。
 「そう言われれば、肉の硬さじゃないもんな。でも、大蒜って煮込むとこんな感じになるんだ。柔らかくて、甘い!」
 「生だと、舌を刺すひり辛の味ですが、煮込むと全然違う味になっちゃいますから。こういうスッポンとか羊とか「果子狸」、「ハクビシン」のことですけど、野味類の煮込み物には、大蒜の塊は欠かせないみたいですね。煮込むとトロトロ。ひり辛の味より、甘味がぐっと出て、思わず食べちゃいますよね」と、私。

 大蒜のほかに干し椎茸も。これがまた、滋味深くて旨い。ですけど、やっぱりスッポンの肉、それに、何よりも縁側が旨い。しかも、思いのほか量はたっぷり。昨年は相次いでスッポンの蒸し物を食べる機会に恵まれて、夏らしい一品と思いましたが、こうやって煮込みの「紅炆水魚」にして食べると、がっしりと重厚な趣で、煮込みもいいなあ!ともあれ、本日のコースで「冬瓜盅生翅」と並ぶ「大菜」。値段の点も含めてのことで、今回のコースの組み立てが予算オーバー。そんな理由のひとつになった料理でもありました。