2008/10/14

広東地方の郷土料理シリーズ、遅ればせながらの2008年「夏の巻」の2

 はたしてどんなメニューを選び、コースを組み立てるか。
 そんなところに朗報が。以前に「夏の味」でも紹介し、編集のMさん、食べて4時間後に「効果有り」なんて話だった大分産の天然物のすっぽんの入手が、可能かもしれないという話。香港や広東地方では、大振りのすっぽんの「山瑞」を素材した料理、滋養供給や精力増強だけでなく、なによりも体を熱くする、温めるってことから冬の料理、野味料理の代表的な料理というイメージが定着しています。

 日本ですっぽんの鍋、たとえば丸鍋など、一般的な認識がどうなのかわかりませんが、私にとっては暑気払いに食べるもの、夏の風物、という印象が濃厚。うなぎよりもすっぽん。なんせ、土用の丑の日にうなぎ、なんて習慣、東京にやってきて、知りましたから。もっとも、大分産のすっぽんを素材にした「紅炆水魚」は、「夏の味」でしっかり味わったばかり。私としては他の調理方法で食べたい、とまあ手前勝手な欲望が頭をもたげます。

 たとえば、スッポンを蒸すという料理方法もある。
 様々な具材とともに蒸す「八寶蒸水魚」。洗練されていて、なおかつ滋味深い味わいは忘れ難い。
 ことに「裙邊」、すっぽんの縁側、ペラペラの触感、味わい、風味、コラーゲンそのものですけど、醤油煮込みなどの調理とは違って、純な味、風味が堪らない。しゃぶりついて、とことん食いつくしたくなります。


これは昨年の夏、何回か食べた「八寶蒸水魚」 。

 蒸す料理方法以外には、すっぽんを細切りにして、各種の具材、それも榨菜や大頭菜など、漬物類と一緒に炒めあわせる、という方法もあります。

 そうだ、すっぽんを「燉盅」と呼ばれる容器に入れ、湯煎蒸しのスープ煮込みの「燉」にする料理も各種ある。
 山芋の一種を干した「淮山」、それに「杞子(くこの実)」、冬瓜とすっぽんを加え、上湯を注ぎ入れ、蒸し容器の「燉盅」で湯煎蒸しにした「淮山杞子冬瓜燉水魚」などその代表的な料理です。

 そこにふかひれを加えるという方法も悪くない。さらに、干鮑、干貝柱、鹿筋などを加えれば、かの「佛跳牆」というころになる。 ことに天然もののすっぽんは余計な脂肪分がなくって肉質もしまり、味わいも純、ピュアですから、だしの味、風味も格別。

 ですが、冬瓜を器仕立てにして、ふかひれを具にして蒸す「冬瓜盅魚翅」と、すっぽんをスープ仕立てにした「淮山杞子冬瓜水魚燉魚翅」なら、調理内容が重複する。
 「冬瓜盅魚翅」にするか、それとも「淮山杞子冬瓜水魚燉魚翅」にするか。それとも、去年、何回か食べたすっぽんと各種具材の蒸し物の「八寶蒸水魚」にするか。

 そんなところに、香港から極上の咸魚、中国オリーブの「欖角」、甘味のある芥子菜の漬物の「梅菜」が、到着。それを使った各種の料理も可能、なんて話に、舞い上がりました。

 「欖角」は魚と一緒に蒸し物にする。香港の家庭では川魚の「鯪魚」と蒸すのが一般的。お惣菜の定番にもなっています。それに豚挽き肉の蒸し物の「蒸肉餅」に使われることもある。「咸魚」との組み合わせなどもあります。煎り焼きの「煎肉餅」の場合には、具に入れ込みます

 「梅菜」は、芥子菜の一種を塩漬けにし、天日干しにして後、再度漬け込んだもので、塩味が利いているだけでなく、独得の甘味、旨味、風味があります。広東省東部の山間部に位置する東江地方一帯に多く居住する客家系の人々が作るそれが絶品とされます。

 中でも有名なのが皮付きのバラ肉と煮込んだ「梅菜扣肉」。もちろんスペアリブと煮込んでもよし、蒸しても良し。「肉餅」にも加えます。鶏肉との煮込み料理なんてのもあります。魚の蒸し物にも使います。
「欖角」にしろ「梅菜」にしろ、広東地方の郷土料理、ことに家庭料理の惣菜には、味付けには欠かせない。

 ということで、肝心の旬の素材の調達には難渋しながら、宴会料理の華となる豪華で贅沢な素材、料理が候補に並び、一方で、郷土料理、お惣菜的な料理も各種実現可能。はたしてどんなメニューを選び、コースを組み立てるか

 今回のメンバーは総勢7人。料理の数は10品揃え、とりあえず、前菜を用意することにして「金銭鶏肝」に決めました。鶏の肝、豚の背脂、金華火腿をたれに漬け込み、焼き上げたもの。青木さん、藤原君にとってはおそよ1年ぶりのはず。
 「あれ、いいよね!」と青木さんも大乗り気。
 残る4人、斉藤さん、景山さん、海津さん、新参加の元EMIの下河辺さんは初体験です。