予想外のゴージャス、デラックスな展開に、興奮を抑えられない。
そして、登場したのが「白果腐竹菜 青菜と湯葉、銀杏のスープ仕立て」。
いちょうの木に実る銀杏が落ちこぼれるのは晩秋の風物。ということからすると、走り物の「銀杏」ってことになります。が、乳白色の湯葉の間から顔を覗かせる黄緑りがかった「銀杏」銀杏は、すっかり秋の訪れを告げる風情があります。
銀杏の殻を割り、実を取り出して串刺しにし、炭火焼きにした時の香ばしさ、ほくほくの触感。青臭さ、苦味、えぐ味がまじった独得の味、風味も格別です。が、青菜、湯葉とともに、だしで煮浸しにした「銀杏」というのも、乙なもの。ぎゅっと噛み締めると、弾ける銀杏の味、風味。くせのある苦味、えぐ味が、だしの味になじんで、甘味が顔を覗かせる。それでいて、やっぱり青々しい精の強さを感じさせるところが、銀杏です。
青菜は台湾のA菜。どうやら、萵苣薹(ちしゃとう)の若い青菜。なんてことからすると、レタスの一種ですね。レタスに比べて葉っぱは濃厚な緑色。特有の青臭さ、ほろ苦さ、えぐ味があるのと、火を通して煮込んであっても「しゃき感」というか、繊維質があるのが特徴のようで、独得の噛み応え、触感があります。日本でも最近、中国料理店で見かけるようになりました。
青菜をはじめ葉物の野菜は、日本では一般的に歯触り、噛み応えのある「しゃき感」を残した調理が好まれてるようです。大蒜の微塵などで香りを出して炒め、だし、さらにはオイスターソースでとろみのある味付け、なんてのが多いようです。
私としては葉物、茎物は、くたくた、ヘロヘロ、トロトロでも構わないぐらい。繊維質を柔らかくしたがの好み。生で食べるより、おひたしがいい。ということでは、中国料理、広東料理なら、青菜の炒めものより、一番だしの「上湯」で煮浸しにした「上湯浸」を選びます。
この「白果腐竹菜/青菜と湯葉、銀杏のスープ仕立て」は、言わばA菜、湯葉と銀杏の煮浸し。ってことは「上湯浸白果腐竹A菜」。 だしを加え、塩で味をつけただけのさっぱり味の煮浸し。口にすれば生姜の香りがふっと鼻をさす、なんてところが憎いです。 しかも、だしの旨さ、味わい、風味の余韻がしっかり残る、なんてところがもっと憎いです。
そして、今回の締めくくりは「南瓜蝦乾飯 干し海老入り蒸しごはん南瓜の器」。
南瓜、つまりは「かぼちゃ」を器にして、干しえび、干し椎茸などを具にしたご飯を蒸したもの。
そのご飯、「蒸しご飯」と表記されていたもんで、糯米(もち米)と早とちりして、勘違い。普通の粳米でした。
それにしても、干しえびや干し椎茸を具にして、新米の粳米、糯米を蒸す料理は知ってますが、南瓜、かぼちゃを器に仕立て、ご飯、それも粳米を蒸す、なんていうのは、私は初体験。香港や広東料理でも出会った事がありません。
「いやあ、俺のオリジナル!香港にも、広東料理にもないよ。かぼちゃを器にして、ご飯を蒸したらどうかなって、考えたんだよ。いろいろ工夫してやってみてね。今のやり方が上手くいったんで」と、譚さん。
そういえば、譚さんの料理を紹介した雑誌で見かけたことがありました。
そのサイズ、メンバーそれぞれの分量に応じて、ということで超大盛り、大盛り、普通盛りと、それぞれに南瓜の大きさ、違いました。
その違いは・・・・・
画像は「超大盛」と「普通盛」。
「実は、案外、大変だったんです。大きさ、サイズの違うかぼちゃを用意するのが!」と、大藤さん。
器のかぼちゃ、種の部分、中心部は削り取られてます。皮についた身を味わうことも出来ます。しっとり、ほくほくの触感で、甘味がある。そして、蒸しご飯が旨い。
その具、ことに干しえびがでっかい。リッチな濃い味、風味を醸し出してます。干し椎茸も旨味たっぷり。魚介にしろ、茸類にしろ、天日干しや自然乾燥したものって、旨味、風味が濃厚。ひと味もふた味も違った味になります。そんな干貨類の旨味、エキスを吸い込んだご飯が旨い。
実は私、新米の粳米をゲットすれば、必ず作るのが、魚介、茸の干し物を具にした炊き込みご飯の「煲仔飯」もどき。 新米の糯米なら、具を糯米に混ぜて蒸すか、具も糯米も炒めあわせ、最後は蒸して仕上る「糯米飯」。「おこわ飯」のようなもので、中国の「粽」の中味を想像ください。
魚介の干し物と言っても、干し海老、するめ、干し椎茸が主素材で、たまに贅沢して干し貝柱の「瑤柱」を使いますが、それも、身が崩れたものばかりです。
そうか、「煲仔飯」もどき、「糯米飯」を作る時、かぼちゃを器にする。譚さん、アイデア戴くことにしました。で、画像は私の「大盛り」です
そして甜品、締めくくりのデザートは、今回も、暖かい汁物でした。
「蕃薯煲湯丸/白玉入りさつまいものデザート」。
薩摩芋を素材に、じっくり煮込んだ「糖水」です。
薩摩芋の甘味、ホクホク味、素朴な風味。そこに、生姜のひりり味、辛味が利いていて、ぴしっと味を引き締めていたのが印象的。甘酒に生姜のひり味、なんてのに通じます。
里芋やタロ芋には出会ったけど、薩摩芋って、香港でみかけたことないなあ、なんて人案外多いようです。ところが、案外、食べられてるもの。
「蕃薯煲湯丸 白玉入りさつまいものデザート」は、伝統的な糖水。
白玉入りなのは、料理店が作る「甜品」ですから。普通の家庭では、白玉なし。薩摩芋を砂糖きびの甘蔗から作った砂糖で煮込んだりします。そこに、生姜を入れてと一緒に、というのがポイント。
ほのぼのとしていてなんだか懐かしい、素朴で純な味、風味。ほっとひと心地ついて、心が和むデザートです。
こんな伝統的なデザート、湯水に出会えるのも「赤坂璃宮」ならでは。譚さんが、広東料理の根っ子にあるものをしっかり見届けてるから、ではないしょうか。