2008/07/27

7月の「赤坂璃宮」銀座店の4

「鹹魚牛崧豆腐煲/牛挽肉と豆腐の鹹魚風味煮込み」が登場し、ご飯を別途注文。ご飯の上にのっけ、ぶっかけ飯にして、豪快に一気呵成にかっこんで「鹹魚牛崧豆腐煲」の旨さをしっかり堪能。

 と、なると、いよいよ最後の締めくくり?
 かと思いきや、もう一品「柱侯茄子炆帶子/帆立貝柱と茄子の煮込み」が登場。

 そうか! 先月は4人、今回は5人。ひとりメンバーが増えれば、その分、予算が増える。ということは、高価な素材を使うことも可能で、一皿の内容、充実を図れる。もしくは、もう一皿、料理の追加が可能。そんなところが中国料理面白さ、楽しさ。人数が増えれば、コースの内容、メニュー構成が、いろいろ按配できるという寸法です。

 さて「柱侯茄子炆帶子/帆立貝柱と茄子の煮込み」。私は初体験。はじめての出会いです。
 料理名にある「柱侯」は広東省の佛山で生まれた味噌、調味料の一種で、佛山の特産品として知られる「柱侯醤」のこと。その「柱侯醤」の内容は、大豆を主体に、塩、砂糖、胡麻、醤油などで作ったものです。本来は肉料理に使われ、家庭では豚のスペアリブ、牛バラ肉の煮込み、鶏の手羽先の煮込みなど使われます。

 そういえばあの「果子狸/ハクビシン」や羊や山羊など、冬場の野味の調理などに欠かせない。それを「茄子」と組み合わせた料理、しかも、「帶子」、新鮮な貝柱と組みあせた料理には今まで出会ったことがありません。

 これからの季節「茄子」が旨い。卵型の真黒茄子、それに長卵茄子や長茄子に、加茂茄子のその一種である丸茄子なすなど、その種類は豊富。灰汁が多いので水にさらし、滋養があるという皮をつけたまま調理。水分をタップリ含んでいることから脱水し、旨味を凝縮ってことから、油で揚げたり、焼いたり、蒸したりして下拵え、というのが一般的。ことに油と馴染みがいい、というのはよく知られます。

 そんな茄子を使った代表的な料理といえば日本でもすっかり中華風惣菜として定着した麻婆茄子、でしょうか。その麻婆茄子からも明らかなように、中国料理で、茄子を素材にした料理には、なんらかの形で肉が組み合わせられるようです。

 そういえば以前、芋頭/里芋のところでも紹介したことですが、茄子もまた「痩物」、それに「寡」、つまりは、それだけでは味が足りない、物足りない素材、なんてことを家郷菜、家常菜を紹介したサイトで見かけたことがあります。ついでに「柱侯茄子」を香港、中国のサイトで検索したところ、ありました。そのレシピを見ると、やはり豚の豚肉が使われてました。

 それが今回の「柱侯茄子炆帶子」、料理名からも明らかなように、豚肉ではなく新鮮な貝柱と組みあわせたもの。それに「炆」というのは、素材を煎り焼き、もしくは揚げて、だしを加えて煮込むという調理方法。

 結果、茄子、貝柱は「柱侯醤」を主体にした甘味、旨味にこくのある味噌味で包まれ、噛み締めるとそれぞれの素材の味が浮かび上がるといった按配。油で揚げた茄子は、しんなりしっとりとした歯触り、触感で、特有のえぐ味をかすかに残した青い味わいが印象的。貝柱は火が通って噛み応えのある弾力を残しながら、むちむちねっとりの歯触り、触感で、貝柱独特の甘味が浮かび上がる。

 その茄子を食べながら思い浮かんだのは、焼いた茄子、揚げた茄子に味噌をのっけて食べる茄子の田楽。そうか譚さん、もしかして田楽をヒントに、甘味、旨味、コクのある「柱侯醤」を起用?なんて、思いあたったりして。肉ではなく、新鮮な貝柱を組み合わせたのも、火を通した貝柱のすっきりした甘味との対比を考えあわせてのこと、だったのかもですね。

 肉や鶏肉、野味と「柱侯醤」の組み合わせは慣れっこの私ですが、茄子と貝柱との組み合わせには意表をつかれました。しかも、こくのある味噌はガツンとくるメリハリの利いた味。それに爽快な茄子、さっぱりした新鮮な貝柱、といった素材と「柱侯醤」の味の対比が面白い。これもご飯と一緒に食べたくなる一品。いや、私としては焼酎を飲みながら味わいたくなりました。