2010/06/03

初夏の味 10年5月の「赤坂璃宮」銀座店の3

「湯(スープ)」は「花生眉豆煲鶏脚湯/落花生と眉豆と豚すね肉、鶏脚のスープ」
素材は落花生、眉豆、もみじ(鶏の爪)。それから豚すね肉とあります。
豬踭なのか豬展なのかは不明。今度、袁さんに尋ねてみます。
豚すね肉がだしの要なのは明らかです。肉の旨味。それに皮付きではありませんが筋の部分にはコラーゲン質がありますから。
これまでにスープやら炊き込みご飯で何度も登場のもみじ(鶏の爪)からはコラーゲンがもっとたっぷり出ます。
 そこに落花生、眉豆の味が加味されます。落花生は揚げて食べることもありますが、こうやってスープの素材にすることもあり。油脂分が多くて、甘味、旨味、コクを増します。
 そして眉豆。これまでにも登場してきましたが、その正体、関西で言うインゲン豆。それが一般的には藤豆、なんてことだそうで。豆らしく澱粉質をたっぷり含んでいます。
 この「花生眉豆煲鶏脚湯/落花生と眉豆と豚すね肉、鶏脚のスープ」。
 ひと口目、豚すね肉の旨味。もみじのコラーゲン質のとろみやこくを感じながらも、すっきりさっぱりの印象。
 長時間、老火(とろ火)で煮込んだこの種のスープに特徴的な穏やかで優しく、口当たりの良い味わい。
 さらに口に運ぶと、豆の味がくっきりと浮かび上がり始めます。甘味、それに澱粉質なんですが、素朴でひなびたほのぼのしみじみ系の味、風味。それも、大地にしっかり根を張っているような力強さがぐんぐんとみなぎりはじめる、といった趣です。
 実は落花生、眉豆にもみじを組み合わせて長時間煮込むスープは、本来は冬の最中に体を温めるために作って食べる、というのが香港、広東地方では一般的。
 豆の味にはクセがあります。干したものですからひなびた味、風味がある。それを和らげるために、蜜付けの棗の「蜜棗」、無花果(いちじく)はじめ干した果実を加え、甘味と風味を加えたりします。
 今年、春になっても温かさからは程遠く、五月になっても冷気はそのまま。例年とはいささか異なる今年の季候、ここ最近の日々からすれば、このスープはうってつけ。食べ進めれば、じんわりと体が温まってきます。
 季節、時候にあわせて素材を按配し、とろ火で煮込む「老火湯」の真髄、極意をしみじみと味わいました。