日光唐辛子、真黒茄子、加茂茄子、青茄子、四葉胡瓜、奥武蔵地這胡瓜に新顔2種。包んである新聞紙をあけると深緑や紫紺の鮮烈な色彩が目に飛び込みます。艶々、キラキラと輝いていて、色合いが深い。
今年の日光唐辛子、生をそのまま齧るとひり辛味の力強さが久々に復帰。辛味だけじゃなくて、青くて、甘味、旨味があってフルーティーなのが日光唐辛子の特徴ですが、一昨年、去年はじめ、ここしばらくひり辛味は控え目に。といってもちろん唐辛子のあの辛さはあり。ですけど、ひり辛味の強さが以前とは違ってました。それが、今年の日光唐辛子、以前のひり辛味が復活。
「これって、サルディニア地方の唐辛子に似てますね!」と、かつてACCAの林さんが語った加藤さんの日光唐辛子が復活。それにしても、毎年、毎年、辛味、甘味、旨味がビミョーに変化。聞けば育てた畑はいつもと同じ。ですが、季候、天気の按配によってその出来映え、違ってくるんだそうで。
おまけに、加藤さん、種撒きの時期、育て方、毎年、工夫を凝らして新しいことに挑戦。なんてことも、出来栄えに関係している様子。妥協がない、というより、凝り性の加藤さん、毎年、何をしでかすのかわからない。もしかして、永遠に試作農業青年のまんまの加藤さん?
茄子は青茄子と真黒茄子をラタトウィユに。青茄子、育ち盛りの若いやつらしく、生で齧ると青さを感じました。肉質の頑丈な青茄子は煮炊きものぴったり。タイ風にしろインド風にしろ、カレーにして食べるのが旨い。ですが、とりあえずはラタトウィユ。一緒に煮込むと青茄子と真黒茄子の持ち味、違いがよくわかります。
そして、新顔が2種。
ひとつは「苦瓜」。見つけた時には思わず小躍り。香港の市場で見かける「苦瓜」と同じだったからです。沖縄産、及び、現在日本の市場で一般的に流通している表面とげとげで濃い緑のものではなく、お肌つるつる、色あいは薄緑。 生のまんま齧ると、やはり苦い。ですが、とげとげの「苦瓜」よりも、青くて、爽快で、フルーティーな甘味がある。
もうひとつの新顔、なんだか加賀太胡瓜のような太さ。でも、体型はずんぐりむっくりじゃなくって、うんと胴長。一体どういう胡瓜?薄くスライスして食べると、実に瑞々しい。水分たっぷりでいて、青味が消え、甘味のバランスが程よくって、香りがいい。こいつは、キューカンバー・サンドウィッチ、胡瓜のサンドイッチにぴったり、うってつけ。早速、作って食べました。直系3センチはゆうにある太さですが、薄切りにして塩をなじませると旨味、風味が増す。バターとの相性もぴったりです。
ところで、あの胴長の胡瓜、なんていうの?と加藤さんに尋ねたら
「奥武蔵地這胡瓜なんです。成長して、でかくなったやつです!」。
もしかして、収穫の暇がなくって、そのままにしてたら、勝手に育っちゃった、ってこと?
ま、それはともかく、普通のサイズの「奥武蔵這胡瓜」と食べ比べ。
うん、なるほど、味、風味は似てます。けど、普通のは青味が強気。でかいのはでかくなった分、水ッ気たっぷり。いくらか大味ぽいですけど、それでも青さじゃなくって、甘味がある。それに、肉質、真ん中の種のところ以外はしっかりしていて、瓜っぽくなる。これなら、炒め物、スープや煮込み物にぴったりかも。
サンプルが届いた福臨門では豚肉て炒め合わせて試食したそうです。そんな目の付け所は実に正しい。スープにもぴったりなはず。「節瓜」代わりになるかもね。
ですが、私は胡瓜のサンドイッチが一番。フォートナム・メイスンのティー・ルーム、コンプリート・アングラーのハイ・ティーの胡瓜のサンドイッチを思い出します。
そして、苦瓜。まずはスープに。ほんとは排骨を探して「苦瓜排骨湯」にするつもりが、排骨=スペアリブのいいのが近所の店でみつからない。川越の「はぎちく」の岸健さんが選んでくれたスペアリブなら文句なしなんですが、川越まで手に入れに行く時間も余裕もない。送り届けてもらうにしても、豚の種類、吟味からはじまりますから、一週間、少なくとも数日前の注文じゃないと入手は不可能。そこまで待てませんから。
幸いにして、近所の店で豚の腿肉のよさそうなを見つけたので「苦瓜痩肉湯」に変更。先月「赤坂璃宮」銀座店に出てきたのは、「梅菜涼瓜湯」で、「痩肉」じゃなくって「バラ肉」、それに「梅菜」と「大豆」が入ってました。漬物、といっても、梅菜、冬菜、大芥菜はおろか、榨菜もなし。大豆を入れる方法もありだけど、どうしようか。甘味を補充する何か。蜜棗もないしなあ。
なら、シンプルに、苦瓜、痩肉、それに、杏仁と杞子で作ろう。ってことで、材料をすべていれて、一旦、沸騰させてあくをとったあとは、コトコトとろ火で煮込むこと2時間。そしたら、清々しくて爽快。野菜と肉の自然な旨味のあるスープが出来上がり。
ですが、心配したとおり「苦瓜」の苦味が少々立ちます。そうか、痩肉じゃなくて、排骨なら、脂身も少しはついてるから、甘味とこくが出る。それに漬物がない分、ひね味、旨味が物足りなく思うのかも、というのが結論。
でも、苦瓜と痩肉をとろ火で煮込んだスープは旨い。作るのに時間がかかります。そのくせ、食べるのはあっと言う間。ですが、手間隙かけるだけの値打ちはあります。体にもいいですから。
もう一品はゴーヤ・チャンプルー。 味、風味の違いがわかりやすいかも、なんてことで到着した苦瓜と、冷蔵庫に眠っていた沖縄産の苦瓜、分量、半々にして炒め合わせました。
私のゴーヤチャンプルー。まず川越の「はぎちく」で吟味してもらったバラ肉を塩蔵したものを常備してありますから、それをスライス。それに、冷凍保存で常備してある川越の小野食品の「お揚げ」。山下達郎、まりや夫妻に送ったところ、たちまちお気に入りになってしまった「お揚げ」です。
それから「山出し」か「羅臼」のセカンド・ランクの昆布で出しを取り、だしがらの昆布は細切りにして具に使っちゃいます。そう、油通しした「苦瓜」のスライス、塩蔵のバラ肉、お揚げやだしがら昆布の細切りを炒め合わせ、出し汁ひたひたの感じに注いで「苦瓜」にだしの味がしみこむぐらい煮込む。
「苦瓜」も普通「しゃき感」が重視されるようですが、私は「しゃき感」をビミョーに残すか、つまり独得の歯ざわりですね、それを残しながらもやっぱり「くたっ!」としてるのがいい。ですから、油通しした上に、さらに、だしで煮込むってわけです。
そういえば青菜の上湯煮浸しの要領です。「上湯浸苦瓜咸肉」ってところでしょうか。そして、「皮蛋や鹹蛋を使わない代わりに、仕上げに溶き卵をまわして、出来上がり。
これが旨かった!沖縄産の苦瓜、やはり、苦味が直接的。それにくらべて到着した香港と同じ苦瓜、苦味のあたりがやわらかい。瓜の味、青臭さ、甘味、風味がしました。
料理写真、旨くって、食べるのに夢中で、撮影、すっかり忘れてしまいました。