2008/08/17

夏の味 三陸シーファームの「海のバター」の2

 志田建志さんの「三陸シーファーム」から届いた「バフンウニ」。
 今年食べたもの中では、最高の美味、極上の美味でした。

 もちろんここ何年か食べてきた「うに」の中では最上のもの。それに、私にとって「バフンウニ」といえば、礼文島のそれこそがベスト、だったものですが、その考えがいささかぐらつきはじめました。

 礼文島のもいいけど、赤崎のも格別。
 というより、なんだか違うもの、違うところがある。
 なんというか、礼文のそれが雄々しい力強さがあるのに対して、赤崎のそれはどちらかといえば妖艶で女性的。

 とまあ、頭の中は「バフンウニ」のことで一杯。それこそまさに「うに」状態、なんて言い方、今や「死語」だと、ウィキに記されてました。オヤジなんだから、ほっといてくれ!

 赤碕の「バフンウニ」の美味を味わった興奮はなかなか収まらず、誰かに話したくて、自慢したくてしょうがない。それよりもこの感動と興奮を志田建志さんに伝え、応援のエールを送らないと。ってことで、久々に志田建志さんと話しました。

 建志さん、私の興奮ぶりに、いささか驚きながらも、嬉しそう。
「いや、バフンウニっても、その種類、一杯あってね。こっち(赤﨑)にもあるんだけど、やっぱり「ムラサキウニ」がほとんどだし、「バフンウニ」はなかなか獲れないんだよ。そりゃ、旨さってことからすると「バフンウニ」だよね。甘味もあるし。

 それより、ここんとこ、以前に比べると、うんと数が減っちゃって。ほら「ムラサキウニ」って、繁殖力もあるし、毎年、毎年、同じような場所に「上がって」きて、群れをなしてるから、収穫しやすいんだけど。それが、「バフンウニ」は、同じ場所に「上がって」くるのは、2年か3年置きぐらい。だから、収穫できる場所は毎年違って、狙いをさだめて獲るんだけどね。でも、最近はなかなか「上がって」こないんだ。やっぱり、温暖化とか、海の按配、環境の変化ってのも、あるからさ」と、建志さん。

 「上がってくる」というのは、本来「うに」は、海底近くの岩場で生まれ、生息し、成長しはじめると昆布やわかめを求めて、その繁茂場所に移動してくる。そうです、昆布やわかめが育つのは、陸地からの真水が海が流れ込み、なおかつ陽の光が届く海岸べりの浅瀬。ということで、「うに」は昆布、わかめを求めて、陸地から近い浅瀬の海に「上がって」くるという次第。

  以前、利尻昆布の取材で礼文島を訪れた際、海中でゆらゆらとたなびく昆布の根本に「バフンウニ」がごろごろ、という光景を目の当たりしたことがあります。それに収穫した「バフンウニ」の殻を剥くと、卵巣に混じって円状の昆布があったりしました。

 そんな礼文島の「エゾバフンウニ」の旨さ、味、風味は格別、なんて話を建志さんにしたら
 「え~? 礼文島の「バフンウニ」? いくら(赤﨑の「バフンウニ」が)旨いからって、礼文のにはかなわないよ!」と建志さん。

 「え~っ!そうかな。礼文島の「エゾバフンウニ」とは、なんだか違う感じだったけど」と、私はその違いをまくしてる。
 やっぱり、生息する海の違い、温度の違い、それに肝心の餌である昆布の違いが、その要因じゃないでしょうか、と私は勝手に結論。いや、これからの課題です。

 そうそう、建志さんの「三陸シーファーム」、建志さんの兄の恵洋さんの「シダッチ」がある大船渡の赤﨑から陸路で行けば10キロ程(だったか)、海沿いなら湾を三つか四つ隔てたところにあるのが吉浜です。そうです、あの「吉品鮑」の産地に他なりません。

 その吉浜、なんでも、三陸地帯でも豊富に昆布などの海藻が生息する地域だとか。吉浜産の「鮑」の旨さ、美味も、そんなところに理由がありそう。そして、赤崎周辺で収穫される「うに」もさることながら、冬場の「鮑」がこれまた実に美味! あ、話、ずれちゃいましたね。

「う~ん、そうかな。でも、確かに「バフンウニ」は旨いよね。特に塩ウニなんかにした時に、その違いは歴然だから!」と建志さん。
「エッ!赤崎の「バフンウニ」で塩ウニ? そんなのありい????」。
聞き捨てならない話に、慌てて落ち着きをなくした私です。

「でも(「バフンウニ」の収穫の)量が少ないし、ほんの少しだけ、知り合いにお裾わけ出来るぐらいしか作れないから!」と、申しわけなさそうに建志さん。

 赤崎の牡蠣の養殖は本業ですから、直接販売の注文や取寄せもOK。
 ですが「うに」、「鮑」は漁期限定で収穫量も少なく、収穫しても地元に漁協に収めるってことで取寄せは難しいそうです。

 なのに、赤崎の「バフンウニ」をここで紹介しちゃって、自慢話、すんません。
 なんとか、取寄せを実現させたい!
 なんて思ってるうちに「うに」の漁期は過ぎちゃいました。
 来年は、取寄せのお楽しみが実現できることになるよう願ってます。

 画像は「バフンウニ」で作った「塩うに」です。冒頭に生の「バフンウニ」も再掲載。