2008/08/16

夏の味 三陸シーファームの「海のバター」

「岩牡蠣」とともに、もうひとつ「三陸シーファーム」から一緒に届いたものがありました。
「うに」です。

 小鉢を少しばかり大きくしたぐらいのプラステッィックの容器に入った2種類の「うに」が到着。
 ひとつは少し黄色がかった山吹色。もうひとつは鮮烈なオレンジ色。そのオレンジの色彩に「ン!?」とばかり目をみはりました。「こいつは「バフンウニ」に違いない!」。

産地直送の「バフンウニ」が入手出来たのは久々のこと。 私の好みの「バフンウニ」は礼文島のそれ、つまりは「エゾバフンウニ」。利尻昆布をたらふく食って育ったリッチなそれで、独得の甘味、香り、風味があります。ところが、収穫期間が限定され、ついつい注文、入手の時期を逃してしまうことが多い。おまけに、年々収穫も難しくなり、今年は例年になく品薄で、入手も難しい、なんてことであきらめかけてたところ、大船渡から到着したのに、まずは驚き、飛び上がって喜びました。

 早速「三陸シーファーム」に確認の連絡をとったら、志田建志さんのおかみさんが電話口に。
「そうです、そうです。あれは「バフンウニ」。もうひとつのは「ムラサキウニ」」。

おかみさんが言うには、今年は「うに」の収穫時期がずれこんで、いつもより遅い収穫、とのこと。それに赤崎あたりでは「ムラサキウニ」の収穫が中心で、「バフンウニ」の収穫は少ないとか。それが、たまたま今年はいっときにまとめて収穫できたので、送り届けてくれた、とのことでした。

「ムラサキウニ」も決して悪くはない。もちろん、私の大好物。純で素朴な海の味、それでいて濃厚でリッチな風味は格別です。しかも、産地によって味、風味が異なるのが面白い。礼文のそれ、三陸、大船渡を比べてみても、その違いは明らかです。

 関西だと、富山、福井、京都に兵庫などの日本海沿いから、それに、西は下関あたりから届くものがありますが、それぞれ味、風味が異なります。中でも私の好みは、淡路と徳島の鳴門周辺で収穫されるもの。鳴門名物の「わかめ」をたらふく食って育ったんでしょうが、舌の上に載せたときにとろける繊細な味わいがたまらない。

 とはいえ「バフンウニ」の旨さは「ムラサキウニ」を凌ぎます。志田建志さんのおかみさんも「ほら、「バフンウニ」の方が甘くって、美味しいよね」と、うっとりとした表情で「バフンウニ」の美味を語ります。いや、まったくの別物だと考えてもいいかもですね。

 赤崎の「バフンウニ」。それは実に見事なものでした。
 確かに、甘味があるのが特徴。それ以上に味が濃い。まさに濃密という表現がぴったりなぐらい味わいは緻密で、深みがあり、実に奥床しくて気品がある。
 生のまま食べると、先にもふれた「岩牡蠣」を生で食べた時のように、舌先をざわざわと撫でていく触感が。それだけで、胸が躍ります。さらに、舌の上で溶けて、とろけて、濃密な味、風味が広がっていく。
 そして、海苔(もちろん、答志島産、伊勢の木野本海苔で入手した乾海苔)の上に熱々のご飯を拡げ、わさびを置いた上に「バフンウニ」を載せ、軽く手巻きにして頬ばれば、思わず「う~ん!」と唸ります。

 生で食べた時のざわざわとした触感は消え、滑らかでねっとり。濃密な味がしなだれかかり、舌にまとわりついて離れない。熱いご飯の上に載っけた結果、体がほぐれて、伸びをしたような感じです。ホクホクとした触感もあり。ほんの少し火が通っただけで、こんなに味、風味が変化するとは!なんて、事実に驚きます。

 「牡蠣」が「海のミルク」なら、「うに」は「海のバター」だ! 
 その濃密でリッチな美味、風味に、思わず無言になってしまった程。
 感動しました。胸を打たれました。
 今年になって食べたものの中では、間違いなくベスト。
 極上の美味でした。