ボブ・ディランの来日公演は9年ぶり。78年の初来日時、東京の武道館、大阪の松下記念体育館での公演をすべて制覇(そのレポートは拙著『ロック・オブ・エージズ』に収録)。
もっともそれ以後の来日公演は東京周辺のみ。
今回、大阪、名古屋、東京での公演のいずれともスタンディング主体のライブハウスでの公演、なんて海外では滅多にない公演スタイルに胸がときめき、そのすべてを制覇したい!という思いはあっても、諸々の事情もあってそれが叶わず。歯軋りしながらネットで紹介される公演ごとのセット・リストをにらみ続けてました。
そしてようやく始まった東京公演の初日、馳せ参じました。
幕開け前にDJのトークの背後に流れていたのはなんとバーブラ・ストライザンド。 え~!? こんなのあり?的な意表をつくバーブラの歌。そのつながりと言えば……。
幕開けは「ウォチング・ザ・リヴァー・フロウ」。懐かしい!
それをブギウギ、サザーンなブルース・フィーリングがたっぷりの演奏、サウンド展開で。
続いて「くよくよするな」。これがまたスイング・センスたっぷりなカントリー調。
チャーリー(・セクストン)がステージに膝まづいて、チェット(・アトキンス)さながらのギャロッピング・ギターで歌をサポート!なんて、をいをい!の感じです。
それに「アイル・ビー・ユア・ベビー・トゥナイト」はハネのリズムでナッシュヴィル風のカントリー・スタイル。ホンキー・トンク的なニュアンスもたっぷり!
おまけにディープなシカゴ・スタイルのブルース・ブギ、南部のサン・スタイルのロカビリー、さらにはテックス・メックス風な趣のサウンド展開。ディランはもっぱらオルガン(懐かしいサー・ダグラス・5のファーフィサの音)を演奏してエキゾティックなテックスメックス風味を盛り上げる。
ともあれ、なんだか50年代のカントリー、ロカビリー、ブルース、おまけにテックス・メックス風にぞっこんの感じです。
オルガンを離れてエレキも手にしましたが、ハーモニカを手にして歌う、なんて場面が目立ちました。生ギターの弾き語りで「風に吹かれて」や「時代は変わる」など、60年代のフォーク時代を物語るものはなし。 そうだ、「ミスター・タンブリン・マン」をやりましたが、全然昔と違う感じ。
当夜の白眉はブラス・セクションの参加はないのに、ブラス・サウンド・プラス風の趣きのリッチでディープな演奏展開だった「トライ・トゥ・ゲット・ヘヴン」。
ストレートなハード・ブギで、思わずロバート・ジョンソンの「ウォーキング・ブルース」?なんて思っちゃったぐらいリフが強力で、男気溢れるパワフルな演奏を展開した「コールド・アイアンズ・バウンド」。
男気溢れる感じが、歌の世界を明確にして、男と女の隔たりを浮かび上がらせる!なんてところにゾクっとしました。
他にもいろいろありました。その辺り、東京ライヴハウスコンサートレポなど、やんなきゃと思った次第。そんなわけで明日(てか今夜)もボブ・ディランのコンサートです。