2010/03/04

春節~春到来 10年2月の「赤坂璃宮」銀座店の8

 そして「本日凍甜品/本日のデザート」。
 色々用意された中で気になったのは豆や穀物を煮込んだスープ仕立ての点心の「喳(渣)咋」。 先月はかぼちゃ仕立て、薩摩芋仕立ての2種ありましたが、今月は「喳咋」のみの登場。
 「喳咋」を待つ間に今月の懷舊点心の「蛋撻」が登場。これが旨かった。
 「わ、嬉し~い!タルト、中華タルト!」とはしゃぎ声が上がります。
 日本でも、東京でも、近頃、飲茶の点心は種類豊富。なかでも人気のあるのが意外や意外、飲茶の甘い点心でもオーソドックスな「蛋撻」。店ごとにいろいろ工夫ありのようですが、たいていはそこそこ、これぞ!というのにはなかなかお目にかかれない。

 カスタードのきめ細かさ、緻密さ、濃密な味わいからすれば福臨門の「蛋撻」。そして「赤坂璃宮」銀座店の久保田さんの手になる「蛋撻」、70年代後半から80年代にかけて花開いた香港の飲茶の点心の面影があったのに驚きました。

 かつて「蛋撻」はどの店も純で素朴な味、風味が基本。伝統的な「蛋撻」なんていっても香港で一般化しはじめたのは20世紀初頭の頃のようです。それが70年代に入って美心集団の「翠園」、美麗華集団の「翠亨邨」などが広東地方の伝統的な「小菜」を提供、なんてのと同時に飲茶の点心も内容充実。80年代に入って香港のホテルに高級中国料理店が続々誕生し、競争が激化。ことに甘い点心の代表である「蛋撻」は、店ごとにそれぞれ工夫を凝らすようになりました。

 やがてリージェントホテルの「麗晶軒」、ペニンシュラの「嘉麟樓」、ハイヤットホテルの「凱悦軒」が、フランス菓子のタルトの手法を取り入れたパイ生地、玉子味、ミルキー風味のカスタードを具にし、しかも小ぶりの「迷你蛋撻」を相次いで提供し、一世を風靡、なんてこともあった次第。実は福臨門の「蛋撻」はその流れを汲んでます。

 それからするとこのこの「蛋撻」は、「迷你蛋撻」が登場するまで、色んな店が洗練化を目指し競い合いはじめた70年代後半から80年代にかけての香港のホテル・レストランの中国料理店の飲茶の点心の「蛋撻」を思い起こさせます。街中で評判の専門店のそれに似て、純な味、風味を残しながら、上品に洗練されたもの。

 そのレシピ、橋本さんに尋ねてもらったところ
 「卵・牛乳・シロップ・パイ生地・水・砂糖のみで作っております」とのこと。
 なんて聞いても、私には作れそうにない。
 そして「喳咋」。
 かぼちゃ仕立て、薩摩芋仕立てもいいですが、色取り取り、各種の豆だけで作った「喳咋」がいいなあ。その素朴で純、優しい味に心が和みます。冷たいのもありますが、もちろん温かいのに限ります。
 気分の問題、なんでしょうけど、冷たいのは口が爽やかになっても、お腹が冷たくなって胃の消化が止まってしまう感じ。温かいのだと消化を促し、ほのぼの気分にさせてくれますから。

 そう言えばいや日清食品が香港でレトルトの「喳咋」を販売してるそうで。ブログ「きたきつねの穴」で知りました。