2009/05/06

五木ひろし 45周年感謝祭 なんばファイナル!歌・舞・奏スペシャル

 中野サンプラザでの山下達郎(+竹内まりや)の「PERFORMANCE 2008-2009」に続いて、渋谷AXでのMOONRIDERSは他にライヴがあって見逃しました。それから大阪の新歌舞伎座で「五木ひろし45周年感謝祭 なんばファイナル!歌・舞・奏スペシャル」。翌日には大宮のソニック・シティで松任谷由実の「YUMI MATSUTOYA CONCERT TOUR 2009 TRANSIT」。
 
 日曜日には国際フォーラム・ホールCで中村中の「異常気象」。 一日置いて世田谷・太子堂の昭和女子大人見記念講堂で坂本龍一の「Ryuichi Sakamoto Playing The Piano 2009」。その翌日には六本木のBILLBORD LIVEで小坂忠&Soul Connection。

 でも「なんでまた、五木ひろし?」という突っ込みがありそうで。
 過日、あの秋元順子の「愛のままで」のオリジナルを越える大物歌手のカバーを耳にした触れた大物歌手とは、他でもない五木ひろしのことでした。五木ひろしの「コットン・クラブ」でのライヴを見てのことで、過日、朝日新聞のステージ評で取り上げました。

 その「コットン・クラブ」でのライブ、今年の2月、五木ひろしがオリジナル作の『江戸の夕映え』とともにあわせて発表された『アメリカン・ポップス&スタンダード~テネシー・ワルツ』、『哀愁のヨーロピアン・ワールド~雪が降る』にちなんでもの。いや、そもそもは「コットン・クラブ」でライブが決まり、結果、その2枚を制作、というのが話の筋道だったなんて話も聞きました。

 「コットン・クラブ」でのライブでは懐かしい日本語のカバー・バージョンによる往年のロカビリー・ヒットやロッカ・バラード、英語そのままのスタンダード、さらにはアダモのヒットなどを披露。そのどれもが拳を握り締め、身体でリズムを取りながらの五木節。英語の歌も、フランス、イタリア、ポルトガル語の歌も、演歌の心で取り組み、あの五木節が全開。和やかな雰囲気で盛り上がります。

 そんな後に「やっぱり、最後は日本人ですから、お茶漬けの味で!」なんてことで、日本のカバー曲を。まずはギターの弾き語りで杉本真人の「吾亦紅」。その曲で、空気一変、次いで歌った「愛のままに」がすごかった。

 きっちりとした人間描写で、熟年の人生模様を丹念に、リアルに描き出す。秋元順子のオリジナルは普遍的。「実はちょっと浮気しかけたことがあるんだけど亭主は知らないはず」なんて、ほのぼのとした井戸端会議的な俗っぽさがあり、ですよね。五木ひろしの歌の解釈、表現はそれはとは対照的に人生の歩み、道程、今、これからを明確に浮き彫りにしたもの。

 そして、オリジナル「凍て鶴」。その最初の一声で、深閑とした厳寒の雪原の光景が目の前に浮かび上がる情景描写に、思わずぶるっと身震い、鳥肌が立ちました。
 そんな五木ひろしの新歌舞伎座での今回の公演。

 画像は勝手に拝借!

 その2部で、自身が歌謡界にデビューしてからの歩み、デビュー前後からの戦後昭和の歌謡曲の歴史を重ね合わせ、当人の年齢にちなんでメドレー61曲で足跡を振り返るという趣向がおもしろい。しかも、自身のヒットに、70年代、80年代のフォーク・ヒットがかなり織り込まれるという趣向。おまけに、ゲストはフォーク/ニューミュージック畑の歌手が出演という構成。私が見た日は杉田二郎でした。

 そういえば昨年来話題の秋元順子の「愛のままで」、さらには異色の?演歌歌手JEROのヒットの背景に、70年代、80年代のフォーク/ニューミュージックの影が見え隠れ、というのは大いに気になっていたことです。というのも、いずれもそのオリジナル、ニューミュージック畑、フォーク歌謡の出身の手によるもの。それに、70年代、80年代にかけ歌謡曲、アイドル歌謡の担い手だった人物もいます。

 そして五木ひろしの「凍て鶴」も、曲は三木たかしですが、作詞はかぐや姫のヒットを手がけた喜多條忠。その曲を収録したオリジナル・アルバムで江戸時代の市井をテーマにした『江戸の夕映え』も、実は歌謡曲畑とニューミュージック畑出身者による作詞、作曲家の作品が混在、というのがその面白さのひとつ。今の時代の「歌謡曲」を物語るものだといえましょう。

 で、つい最近耳にした面白くて、興味深い話。
 「70年代、80年代の歌謡曲に興味があるんですよ」という若者の話に
 「一体どういう歌が?」と尋ねたら
 「さだまさしとか松山千春、かぐや姫とか中島みゆき」という答えが返って。
 「え!それってフォークじゃない!」とその話を耳にした人、聞き返したところが
 「そうなんですか?」と、意に介さない風だったそうで。
 ちなみに「ユーミンは?」と尋ねたら「あれは、ポップスですよ」ときっぱり。

 なんて話と昨今の歌謡曲事情やら、五木ひろしの公演のことが頭の中でミックス・シャフル、つながる線が見えてきます。