2009/05/29

郷土料理が旨い~09年5月の『赤坂璃宮』銀座店の1

 おっといけない。危うく今月の『赤坂璃宮』銀座店報告、月越えになっちゃうところでした。
 この連載シリーズ、今回で2年目に突入。ということで副題の5月に09年を追加。そして今回は家郷菜ならではの料理がずらり。おまけに一周年を記念して、なんてわけでもないでしょうが、宴会料理の花、豪華な魚料理が登場というビッグ・サプライズも!

 まずは前菜、今月は(というのも、なんでだか前菜の中国表記名、毎月、変わるもんで)「広東焼味盆/前菜の盛り合わせ」は、「鶏肝」、「叉焼」、「焼鴨」、「牛展」。醋漬けの野菜は「蕪」、それに赤と黄色の「パプリカ」。

 「鶏肝」は、甘味たっぷりの濃厚な味わい。普通、香港じゃ「麦芽糖」を使ったりするんですが、火が入った砂糖の蜜のじゅくっとした甘味、「鶏肝」のねっとりの触感に見事にマッチング。その少量ながらもそのこってり感、コクのある濃厚な味わい、風味がたまらない。

 そうそう、このこってり感、こくのある濃厚な味わいこそ、関西方面で長年、伝統的に語られてきた「まったり」感、というにふさわしいもの。「エ!まじ?」なんて声も聞こえてきそう。

 私の知る限り「まったり」というのは、こくがあって濃厚でこってり、ずしんとした手応え、しかも、舌に重くのしかかるような味わい、悪魔的でもう後戻りは出来ない魔境、けものみちに入り込んだような状態で、身も心もすべてお手上げ。なんてのが私なんかが意味するところの「まったり」。

 ところが、近頃は、その言葉が使われる本場、関西でも、かつてはそのニュアンス、表現、違ってきたみたいですね。なんだか、ぬくぬく気分で放心状態的気分に陥った時の表現、なんてことで頻繁に語られるようになっているみたいです。

 そういえば、大阪発の「あまから手帖」を紐解いていたりすると、店紹介における料理についての記述で、ライターの人の表現や形容、大阪、あるいは、関西圏共通の表現、語り言葉が使われていながら「あれ?これ、どういうつもりで書いてんの?」。「まったり」という表現に限らず、その嗜好、私がかつて神戸にいて、関西文化圏にどっぷりだった時代とは違ってるみたい、なんて思いますから。

 話を戻して「鶏肝」。甘味のあるこってり味、ねっとりの触感で、風味が豊か。中国産のスピリッツ、広東料理なら米からできた焼酎なんかがほしくなります。それに、叉焼の旨さも、格別。

 ところが、今月の「焼鴨」、いつものに比べ、味、風味いまひとつ。素材自体、時期を過ぎちゃった感じで、風味が乏しい上に、焼き加減もちょいと過ぎた感じで、皮のつや、肉もぱさつき加減。ま、こういうこともたまにありかも、なんて思いました。

 そして、登場したのが今回のヒット作の一品、しかも「赤坂璃宮」銀座店の「家郷菜」のグレイテスト・ヒッツの一品にあげられそうな料理です。「袁さんにやってもらえませんか?」と、かねてより依頼していた料理なんですが、その願いが実現しました。