行くか行こまいかと思い悩んだイーグルスの来日公演。行ってきました。
そういえば、昨日の朝日新聞の夕刊に掲載された近藤康太郎記者によるコンサート評によれば、見出し「変わらぬ泣きのメロディー」なんてあって、その記事からするとなんだか懐メロ大会の趣き、ふんぷん。ちょいと足が重くなります。
もっとも、なんかありそ!なんて思ったのは、ネットで知った今回の来日公演のセット・リストによれば、その幕開け、グレン・フライ、ドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ティモシー・シュミットが並んでスティーヴ・ヤングの「セヴン・ブリッジズ・ロード」。
スティーヴ・ヤングはアラバマ出身のシンガー=ソング・ライターで、ヴァン・ダイク・パークスの名作「ソング・サイクル」の冒頭を飾っていた人物。その彼の「セヴン・ブリッジズ・ロード」をやるなんて相当なわけあり、と事情通なら思うはず。
ところが、本日のドーム公演、ヤボ用に時間をとられて開演に遅刻。肝心の幕開けの歌、聞き逃しました。それより、到着していきなり耳にしたのが「ホテル・カリフォルニア」。
「お~、こんな早くにこの歌ですか……」なんて思いながら耳を傾け、待ちましたあの間奏のギター・バトル。
かつてのドン・フェルダーにとって代わったスチュワート・スミス。最初はドン・フェルダーのあのフレーズをなぞりながら、しかし、半ば過ぎあたりから独自のフレイジング。その後を受け持つジョー・ウォルシュも、あのクキクキグィ~ンの音じゃ、ないじゃん!というオリジナルからびみょ~に変化したスタイル。嬉しくなりました。
続いて「ピースフル・イージイ・フィーリング」、「言い出せなく」、「魔女のささやき」、「いつわりの瞳」など、懐かしいヒットのオン・パレード。
しかし、でっぷり太ったドン・ヘンリーがギターを抱えて「ボーイズ・オブ・サマー」。
がらりと雰囲気が変わります。そんな感じの前半。4人のハーモニーが見事。
なんていっても、その厚み、時にサポート・メンバーも加わってのもの、なんてところを見逃せない。
そして4人のアカペラによる「失われた森を求めて」から始まった後半。
続く「夏の約束」あたりから、雰囲気一変。
「明日はきっと晴れるから」あたりになると、なんというか映画『ラスト・ショー/Last Picture Show』をほうふつさせる世界。砂埃の舞うアメリカの中西部の田舎の風景、ですね。
スタインベックの「怒りの葡萄」、さらにはやケロアックの「路上にて」なんかのイメージが重っていきます。
そして懐かしい「至上の愛」。けど、その歌詞からすると、もしかして、アメリカの田舎ではありがち、なんて言われて、カントリー・ソングのテーマになってたりする「情事」「密会」「密通」の世界?なんて想像が膨らむ。
おまけに続く歌が「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」。ランディ(・マイズナー)に代わって誰がリードをとるの?それはグレンでした。けど、高音が伸びない。
その曲、サザーンなソウル/カントリー風味ですが、ソウル風に仕上るかと思いきやアル・ガースがヴァイオリンを奏でてカントリー風味に。ますます、中西部の田舎事情を物語る趣きに。
なんてところに続いたのが「エデンからの道、遙か」。
アメリカのアフガン、イラクへの介入を背景に生まれた歌。ステージ後方のスクリーンに映し出される数々のシーンの中には、進軍を続けるアメリカ兵を写した場面、なんかも。
ブルース・スプリングスティーンが「Born in the USA」で、ベトナム戦争でのアメリカの犠牲者、ベトナムに派遣されたアメリカ兵、ベトナム・ベテランのことをテーマにしたことが思い起こされます。
そう、イラク・ベテランのことを思い起さずにはいられない。
ジョー・ウォルシュの「ライフズ・ビーン・グッド」もアメリカの消費社会がその背景にあり。さらにはドン・ヘンリーの「ダーティ・ランドリー」は過剰なマスコミ報道を批判。なんていってもドンがそのエジキになった腹いせ、つうのもありますけど、日本のTVのワイド・ショーに、そのままあてはまる歌。
締めくくりはイーグルス・ファンのご期待に応えて「ハートエイク・トゥナイト」、さらには「駆け足の人生」。ティモシーが手拍子をよびかけるなどして、盛り上がりの大団円。味わいを増したドン・ヘンリーの歌。絶妙のハーモニー。それに、遊び心もたっぷりで見せ場を心得たパーフォマンス。そして、ジョー・ウォルシュとスチュワートのギターの掛け合いの妙、ことにリズム・ギターのアンサンブル。
観客を見渡せば「坊主」、「刈り上げ」の若者はほとんど見当たらない。昨年のこの時期、ボブ・ディランのコンサートで見かけた光景とは違いました。目立つのはグレーヘアで、それも中年の髪長目のふつうの感じ。団塊の次なる世代、ってことでしょうか。
「懐メロ大会」、「集金ツアー」じゃないの?
とまあ、今回の来日公演、懐疑的でしたが、前半やアンコールでは「懐メロ」をしっかり聞かせ、ファンを楽しませてくれるサーヴィスもたっぷり。
ですが、今、言いたいこと、言っときたいことはビシっと伝えて、強烈な印象を残す。
「Long Rord Out of Eden」をもっぺんおさらいしてみたくなりました。