2008/06/22

「赤坂璃宮」銀座店の3


 「時菜油泡扇貝」、おまけに、添えられた四種の「醤」で、大いに盛り上がった後に登場したのが「黒椒炒和牛/和牛肉の黒胡椒炒め」。
 「ワッ! 肉! 牛肉じゃん、これ!」と、大盛り上がり。そうです。牛肉と言うだけでも、盛り上がっちゃいます。ですが、それだけじゃないんですよね。

 その味付け、調理、香港の広東料理ならではのもの。 香港の広東料理の定番的な料理、メニューのひとつに「中式牛柳」というのがあります。 中国風のフィレ肉のステーキ。訳せば聞こえはいいものの、かつて香港で牛肉といえば、日本のそれのように刺し(脂肪)が入った身の柔らかいものじゃなくって、農耕系の牛や水牛をつぶした硬い肉が中心。

 そんなことから、肉をいかに柔らかくして調理するか、という創意と工夫が凝らされた。それが、戦後、各国から輸入肉が到来。中でも人気を得たのが日本の牛肉だったことは言うまでもありません。が、値段は高い。 そこで、一般庶民にもてはやされたのが米国、豪州産の牛肉。中でも人気を呼んだのが、黒胡椒風味のステーキ。 最初は香港の洋食店で人気のメニューに。それが、広東料理店にも浸透し、かつての「中式牛柳」にとって替わるほどになりました。

 黒胡椒のひり味の利いた牛肉のステーキを噛み締め、戦後の香港の広東料理における牛肉料理の変遷を思い浮かべた次第です。