2008/06/10

閑話休題 鳥越祭の1

あ~あ、終わっちゃいました、鳥越祭。

5月の三社、6月の鳥越は、私にとって一年を通して最大のイベント。その 三社と鳥越、それぞれに味わい、雰囲気、風情が違います。

「三社なんて、観光化された祭、だもんな」なんていう人もいたりしますが、私はそうは思いません。確かに三社には独特の華やいだ雰囲気があるのは事実です。

 それより、三社と言えば「宮出し」のことばっかりが話題になって、三社祭を取り上げるマスコミの報道もそれ一辺倒。もしくは、例年百万人を越える、とか言われる三社目当てに浅草に訪れる観光客の人数や、浅草神社から出て町内を渡御する三つの宮御輿のことばかり。

 もちろん、本社の三つの宮御輿の渡御は特別なもんです。それがあってこその三社祭です。が、三社の本社の御輿渡御の真髄は「宮出し」よりも、おごそかな雰囲気に包まれ、遠い昔の時代に舞い戻ったような錯覚に陥る「宮入り」にこそあり、というのは地元の人々の多くが語ること。

 それに、町内ごとにある御輿の町内渡御も和やかで楽しい。 私が世話になってる雷門中部は、土曜、日曜の両日の町内渡御では、浅草神社、浅草寺にまで繰り出します。その間、宝蔵門や雷門の潜り抜け、仲見世の通り抜けは、担ぎ手にとって興奮とスリルを覚えずにはいられない美味しいスポット。

 宝蔵門や雷門では、御輿担ぎの掛け声が、わんわん響いて耳に届き、興奮を覚えずにはいられない。担ぎながら門を潜ってこそ、味わえるもの。仲見世の道中も、掛け声がわんわん鳴り響いて耳に届きます。それも、担いでいるからこそ、味わえるもの。 それに、三社のそれぞれの町内の人たちの楽しみ方も和気藹々としていています。

 鳥越の人たちの祭りの楽しみ方も面白い。格別な味わいと独特の風情があります。
 三社の華やかさや粋な趣とはいささか違い、気取りが無くって、ざっくばらん。
 実にくだけていて、人情味にもあふれていて、ぐっと庶民的。

 もちろん、地元の人たちにとって鳥越祭は日常の「ケ」ではなく、まさしく「ハレ」の日々。
 それを象徴するのが、鳥越の祭り、御輿を扱ったカレンダー。
 その始まりは、なんと6月。すべては鳥越祭から。
 なんてことからも明らかなように、鳥越祭のある6月、鳥越祭の日々は、地元では新年、正月というにふさわしい。ですから、地元の人の祭りの楽しみ方は、新年、お正月の楽しみにも似ています。 町内ごと、家ごとに、それぞれの楽しみ方があるようで、そのひとつひとつを覗いてみたくなります。

 玄関のガラス戸を大きく開け放ち、玄関のたたきや上がり座敷に、あるいは日頃、車を置いてある駐車場のスペースに、テーブルや床机座椅子を並べてあります。
 玄関前にテーブルや椅子を持ち出して並べるなんてのもあって、その様相は家ごとにまちまち。
 中にはビール壜のケースに板を渡しただけの簡単なしつらえ、なんてのもあってほほえましい。

 そんなテーブルの上は、ビールにお酒、各種のつまみ、とっておきのご馳走や、なんてことない日常のお惣菜の類で埋め尽くされてます。
 一軒ごとに立ち寄って、片っ端からテーブルを埋め尽くすつまみや御馳走の数々を、全部味見をしたくなる衝動に駆られます。  

 さて、今年の鳥越の本社御輿の渡御。
 今年の三社では本社の渡御が中止。
 日頃、浅草神社から仲見世の町内に本社の三つの御輿が受け渡しされるまでの間、地元の氏子連に混じって、近隣の各地から馳せ参じた面々が御輿に群がり、浅草神社、浅草寺の境内をあっちこっち。そして三つの本社御輿がそれぞれの町内に受け渡される、というのが三社の「宮出し」。

 そんな三社の「宮出し」が、今年は本社の三つの宮御輿の町内渡御が中止ってことでありませんでした。そんなことから、近隣の御輿好きの連中が鳥越の本社御輿の町内渡御や「宮入り」に集結、なんて噂が鳥越祭の始まるまでに飛び交ってました。

 鳥越の本社御輿といえば、三社の宮出しとは対照的に、町内渡御を終えた本社御輿が鳥越神社に収められる最後の儀式、地元の「睦」、「宮元」による「宮入り」の道中が、話題を集めてきたもんです。

 というのも、「宮入り」の道中の際、それも「宮元」の道中を狙って、各地からやってきた六尺一丁の軍団が本社御輿を落とそうと襲い掛かる。地元の「睦」や「宮元」にとってははた迷惑で厄介この上ないことなんでしょうが、見物人にとっては最大の見物。しかも、御輿が落とされる場所は、毎年、あっちこっちと変わるもんで、そのやりとりが見られる場所を狙い定め、見当をつけながら見物の場所を陣取る、なんてのも楽しみです。

 そんなことで、例年、鳥越祭の本社御輿の「宮入り」には、見物人がびっしり! そんな見物人の合間に、出番待ち?の六尺一丁の兄ちゃん、おっちゃんが、ひそかに紛れ込んでいたりします。 鳥越祭の本社御輿の「宮入り」ならではの光景です。