鳥越の本社御輿の渡御で、一番の話題、見ものは、地元の「睦」、「宮元」による「宮入り」の道中を妨げ、本社御輿をつぶそうとする六尺一丁軍団殴りこみ、ってことになってます。見物の野次馬にとっては、面白くて、楽しみな「鳥越祭」ならではの見ものです。
ですが、見物人がひしめく「宮入り」もさることながら、地元の「睦」による本社御輿の町内渡御の「宮出し」での厳かな風情が、実に味わい深い。眠い目をこすりながら、鳥越の本社の「宮出し」を目の当たりした光景は、いまだに忘れられません。
私が鳥越でお世話になってるのは小島の越村さんち。
小島の町会の睦で「今年、最年長になっちゃったよ!」って、満面笑みを浮かべながら、今年の鳥越祭でも大張り切り。越村さんのお世話になってから、もうどんぐらいになることやら。
きっかけは川越の豆腐屋の小野哲に紹介されてからです。仕事の関係もあってか日曜の本社御輿の町内渡御しか参加できない豆腐屋の小野哲と違って、仕事なんかおっぽりだして御輿を担ぎたい私は、毎年、宵宮、翌日の町内御輿の町内渡御、本社御輿の町内渡御と、すべてに参加。
御輿担ぎの合間には、越村家の居間に居座り、飲んじゃ喰い、眠くなれば「あ、すんません、眠いんでちょっと」と、越村家の2階でごろ寝、という遠慮がなくってあつかましいマイペースな御輿担ぎおたくです!
そんな越村家の鳥越祭の日々、入れ替わり立ち代り訪れる人々の顔ぶれが面白い。
まさしく新年の賑わいそのままです。
まずは、越村さんの長兄の島倉さん。日曜日には息子のしょうへい君夫妻が加わります。普段なら板橋の次兄のお兄さんご夫妻も。ですが、今年は体調を崩されて欠席。そこに、なんでだかいつのまにか私が居座ってます。しかも、居間に上がってすぐ左、TVの前というのが私の定席。
それを迎えるのは越村さんのおかみさん、息子のこうたろうさん。が、今年は、おかみさん体調芳しくなく、おまけにこうたろうさんも仕事で出張。そこで、大踏ん張りなのが、長女のくみこさん。関西弁がペラペラで、私との会話は、いつもツッコミとボケの間柄。まるで漫才をやってるみたいと言われます。
そこに越村さんの町内の睦の面々がやってくる。その大半が、どうやら越村さんが鳥越祭りの日々に作る「おでん」目当ての様子!
越村さんちの「おでん」は、祭りの前日から昆布を水出しにし、鰹節を加えて作った出しが味の要。
それから二番だしを作ったり、水出しにした昆布も無駄にせず、割いて、結んで、おでんの種に。
おでんの種の練り物類は、実は、四国の今治の桧垣かまぼこに依頼して送ってもらったもの。そこに東京ならではの具種、卵、こんにゃくなどを加わります。ちなみに、今治の桧垣かまぼこは私のお気に入り。簀巻きの「鶴姫」の素材の持ち味がする飾りのないピュアな美味が好みです。関西では「てんぷら」と称する具種に工夫を凝らした各種の練り物類の素朴でピュアな味もグッド。
祭りの前日から出しを仕込み、大きな鍋一杯に盛り沢山の具種を入れて、煮込んだ越村さんの「おでん」は、越村家を訪れる人々の間では評判のもの。
「今年の出しの塩梅、どうかな~」
と、いつも決まって、最初は不安気な表情の越村さん。
今年はおかみさんが不在のため、くみこさんが、味見の手伝い。
「もう、忙しいのに何回も何回も、「(出しの)加減どう?」なんて、しつこくしつこく聞かれて!」と、呆れ顔のくみこさん。
もっとも、じっくり煮込んで時間がたてば、出しもいい塩梅になって、具種のどれもが食べ頃。
一口食べて、誰もが「美味しい!」。
その一言で、越村さんもにんまり。
中でも人気のあるのが「たこ」。これが実に美味。
誰もが「たこ」の美味を知っていて、「たこ」が入ると、みるみるなくなります。
その「たこ」を目当てにやってくるのが、米屋の都築さん。今年はおかみさんも一緒でした。
それから、越村さんの隣人で、びく抜き、つまり紙の打ち抜き加工をやってらして、とあるオーケストラのトランペット奏者でマネジャーも務める小島さんはじめ、町会の睦連の方々が入れ替わり立ち代りやってきます。
そして、越村さんちで知り合ったのが、勅使川原さん親子。
娘の恵美さんの御主人はリヴァプール出身で日本で英語教師を務めるスティーヴン。弟のリチャードがやってきたこともありました。現在は、リヴァプールのビートルズ・ミュージアム勤務。
今年は、そこに越村さんの町会の睦仲間の松下さんの娘のえみさんが、リヴァプールに留学中に知り合ったボーイフレンドのマイクと一緒にやってきた。
それに、ここ数年、私が御輿に引っ張り込んだ甥っ子が、仕事仲間でヨークシャー出身のサイモンを連れてきた。
さらには、スティーヴンの知り合いで、リヴァプール出身で名前の似たスティーヴが加わった。
今年の鳥越祭の越村家には、イギリス中部の出身者がずらり。
例えれば、宮城出身の3人に岩手の出身者が加わり
「おめえ、あそこの在、なのが~?」
なんて感じで 地方訛りむき出しの英語が飛び交う有様。結果、スティーヴとマイクは同じ学校の出身で、先輩、後輩の間柄だった、なんてことも判明!
イギリスから遠く離れた極東の地で、出会った4人の盛り上がりようは、尋常じゃない。英語の訛り具合は一気にエスカレートし、4人はなお一層、早口でまくしたてる。
ですが、越村家の居間に居合わせた4人以外、何が何だかわけがわからず、目の前を飛び交う異国の言葉に、誰もがあっけにとられ、ポカーン状態。通訳を買ってでようにも、訛りがすごくて手に負えないもんで(なんて、ごまかしたりして!)
実は越村さんち、毎年、国際色豊か。異国の人がなんでだか、越村家の居間にいるのが面白い。
なんせ、かつてはアラブの某国の大使もやってきた、とまあ、毎年、鳥越祭の日々の越村家はインターナショナル。
スティーヴンと恵美さんには、長男のショーン/翔音と長女のカナ/可奈ちゃんの二人の子供。
ショーン君、日本語をあまり話す機会のない父親のスティーヴンの通訳を務めてくれるのが頼もしい! それに、鳥越の生まれ育ちの恵美さんの血をついで、祭り、御輿が大好きで、祭りの間は鯉口に股引姿。
おじいちゃんの勅使川原さん、ショーン君のそんな姿が可愛くてたまんない様子。