2007/08/27
不時不食、素材がすべての中国料理、その④
「加茂茄子」は収穫の端境期だったために呉さんは試食、賞味できず。その代わり、運よく呉さんの手元に届けることができたのが「はぐら瓜」。
7月7日に紹介した加藤さんの「夏野菜」の画像の中央、「青茄子」と「加茂茄子」にはさまれて横に寝そべっているのが「はぐら瓜」。
ネットでいろいろ検索してみましたが、どうやら白瓜の一種。ところが、加藤さんのはネットで見つけた白瓜、はぐら瓜をうんと生育させたもの。最低でも25センチ、時には30センチ程の大きさ。
薄緑の皮をむき、中の種をとってかぶりつくと、水気あり。なのに、噛み締めると水っぽくなく、清廉で無垢な青い甘味がある。
小ぶりの白瓜なら、子供の頃、さかんに食べたものですが、それよりもでかい。なのに、果肉が甘く、噛み締めるとジューシー。生のまま、なんもつけずにポリポリ食べちゃいました。
なんでも、もともとは収穫してお漬物に、というのが伝来の調理方法で、ネットで調べると「はぐら瓜」を使った漬物はわんさか出てきます。そういえば、奈良漬にも使われるらしい。
そんなことを知って塩を振り、一晩寝かせて、浅漬けにしました。甘さと清涼感があって、なおかつ旨味がうんと引き締まった感じだ。さらに、冬瓜同様、和風、中国料理風、いろいろ試してみましたが、火を通すと、何といってもつるんと滑らかな触感が堪らない。
この「はぐら瓜」こそ、広東料理の手法で、いろいろ調理できるのではないか!との狙いもあって、呉さんにそれを依頼しました。
私の狙いは、冬瓜の早生の「節瓜」に似ている様子なので、「節瓜」の料理の数々は?と、呉さんに提案、というか、願い出た次第。ただ、果肉の肉質は「節瓜」に似ていても「はぐら瓜」の味、風味は「節瓜」に比べ、青臭さはともかく、甘い。そこが工夫のしどころかも。
はたせるかな、呉さんが用意してくれたのは「勝瓜雲耳炒圍蝦」の「勝瓜」を「はぐら瓜」に置き換えた「白瓜雲耳炒圍蝦」。はぐら瓜、きくらげと蝦の炒め物、です。
それが実に素晴らしかった。ことに「はぐら瓜」が素晴らしかった。
火を通した5ミリほどの薄さのはぐら瓜は、半透明の薄緑。つるんと滑らかで、まるでビロードのような歯触り、舌触り。その質感、洋梨のスライスをバターでソテーした時の感じにも似ている。が、それよりも粘着的な歯触り、弾力があって、噛み応えもある。
しかも、噛み締めれば、フルーティーな青い酸味、潤いのある自然な甘さが、じんわりと浮かび上がる。繊細で、きめ細かで、気品のある甘味、旨味が頭をもたげ、清涼感あふれる香りが口中に漂う。おまけに、しなやかで力強い。
加藤さんの「はぐら瓜」も凄い。その持ち味を最大限に引き出した呉さんの手腕も素晴らしい。
「白瓜雲耳炒圍蝦」は、今年食べた料理の中で、だんとつの旨さ、風味でした。
先にもふれてきた「茄子炆紅斑」、さらには「梅辣青茄子粉絲煲」の加藤さんの「青茄子」の美味もさることながら、それを超えてました。
その「はぐら瓜」、収穫期は7月半ばから8月半ばにかけて。9月前、名残りの最後の収穫があるかもしれない、とのこと。なんとかゲットしたいと願ってます。
画像は「白瓜雲耳炒圍蝦」。その美味と再び出会うには、来年まで待つしかない。
いや、加藤さんの野菜は、毎年、味、風味が微妙に異なります。
そう、加藤さんの野菜だけに限らず、野菜も生き物。その年の天候に左右されますから。
ということでは、今回の「白瓜雲耳炒圍蝦」は、まさに一期一会の味、風味。
その美味、風味、旨さ、一生忘れません。