2007/12/17

中国料理におけるメニューの選択、コースの組み立て(その6)


 話を戻して、昼時の中国料理店のランチでのメニューの選択。 1品か2品で、スープ、ご飯付き。なんて時、気の置けない仲間同士なら、選ぶ料理に工夫を凝らしたりしませんか?

 「俺はエビチリ」。
 「なら、俺は麻婆豆腐」。
 「そしたら俺は酢豚にするワ」、と言った按配で!
 
 素材は「エビ(海鮮)」、「豆腐(+豚肉)」、「豚肉(+野菜)」ってことで、重ならない。ついでにいえば、青菜など野菜の炒め物でもあれば、文句なしの選択。って、別に、食事診断してるわけじゃない。全体のバランスを考えての話です。

 そういえば、北京にしばらく滞在していた折り、日頃、ランチを食べる食堂に案内してもらった時のことを思い出しました。

 主菜の選択などは、先にもふれたような日本のランチでのものと変わりない。めいめいが好みの料理を選びながら「あ、それにする? なら、俺はこれ!」といった按配です。
 もっとも、日本の場合だと、選ぶ料理は、日頃、馴染んだ中華の定番的な料理が中心。店が用意しているのも、その種のものがほとんどですから。しかし、北京などでは、やはり旬の素材を使った惣菜的な料理を選びます。

 それから、野菜。北京での場合、炒めものなどをとるよりも、前菜として生野菜を味付けしたものをめいめい好みで選んで、同席した連中に勧めたりする。パリの中華料理の食べ方とは異なります。
 たとえば、胡瓜の和え物やセロリの辛し和え、トマトそのまんまなどを。それがずらりと食卓に並ぶ。その種の前菜、食堂の店先のガラス・ケースに作り置きのものが並んでいたりする。ない場合は、店の人に口頭で頼んだりする。それから、日本のようにランチはスープ付きではないので、皆で相談して、選ぶこともある。

 「あの、料理、味精(化学調味料)を抜いてもられるのかな?」と、連れて行ってもらった地元に人に私が言うと、そのまま店の人に尋ねてくれて、「いいですよ!」と店の人。「抜いてくれるって!」と地元の知人、なんてことが、ほとんどでした。
 北京の街中の食堂、私が行ったところのほとんどは、そんな風に対応が柔軟。なんでも要求に応えてくれる様子でした。それって、北京郊外の北戴河で飛び込んだ店、それに、上海、南京なんかでもそうでした。

 その点、日本の中国料理店では、昼時にはなかなか難しい。
 混雑してるもので、そんな要求には応えられません、というのがミエミエの感じで面倒くさそうに「はい、一応、伝えておきますが~」と、つっけんどん。
 もっとも、親切な店もあるもので「あのう、そうしますけど、(化学調味料抜いたら)味がなくなっちゃいますが、それでもいいですか?」と、ウエイトレス嬢に言われて、絶句!
 一瞬、ポカンとなって我に返り、「いいです!」なんて、返事したりして!
 浜松町の某店での話です。

 香港のランチの場合、好奇心から工場街の食堂のあちこちに出かけた時には、一汁二菜、というのがほとんどでした。店頭にでかい蒸篭があって、出来合いのおかずが並んでいる。それから2品ってこともあったし、店内の壁にはってあるメニューから2品、ってこともありました。
 それから、スープ。街中の料理店のような本格的ものではないにしろ、ハト麦とかの穀物などを主体にした「例湯」、日替わりのスープあり。日本の中華料理店のように定食についたスープとは違います。
 そんなこと以外で、ランチを共にということで誘われ、出かけた時には、広東系、上海系の人間では、それぞれ料理の選択が違いました。社員同士、連れ添っての昼食ってのが、案外多くって、ご相伴に預かった次第です。
 仕事との兼ね合いのランチ・ミーティング、なんて時には高級店で、それこそ「商務昼餐(ビジネス・ランチ)」として用意されてるコースそのままか、夜の宴会コースを省略、ミニチュア化した豪華判メニューというのがほとんど。しかし、会社の仲間同士での食事となると、ランチ・ミーティングの時とは違って、さあ、昼飯!なんて感じで、気取りがなく、ざっくばらん。

 広東人系の人たちが中心だと、やはり、飲茶。もっとも、頭数が揃ったときの話で、週に2回ほど、あるか、ないかという感じ、と教えられたものです。
 そんな時には、まず、家鴨、皮付きバラ肉、鵞鳥、叉焼などの焼き物、白切鶏などの前菜をとって、飲茶の点心を。もっとも、手当たり次第、なんでもかんでも、というわけではなく、2~3品、あるいは、4~5品、相談しながら選んで注文。その選択も、蒸し物、煎り焼、揚げ物、煮込みものなど、バランスよく工夫する。というより、自然にそんな風に選んでしまう様子でした。
 それから「例湯」、日替わりのスープ。さらに、旬の素材を使った「小菜」を選び、野菜料理を一品か二品。野菜料理というのは、たいていの場合、青菜の炒め物。生野菜を素材にした前菜を選ぶ、北方、北京の昼食とは、その点が違いました。それから、締めくくりに、飯か麵を選ぶ。 飯の場合は炒飯。麵の場合は、炒麵だったり、汁麵だったり。それに河粉か米粉の炒めもの、という構成。
 上海系の人たちの場合、出かけるのは上海系のレストラン。ですから、広東系の料理店の飲茶のように点心が豊富にあるわけでもない。もちろん、生煎包や小籠包など、点心がまったくないわけではないですが、そいうのにはあまり手をださない。
 紹興酒で漬け込んだ鶏肉の「酔鶏」や、香港で生まれた上海系の料理である「乳鴿」を紹興酒漬けにした「酔鴿」はじめ、上海料理独特の前菜類。それから、炒め物、煮込み物などを並べ、あわせて「菜飯」を頼み、料理をおかずにして食べる、という按配。どっちかといえば、昼、夜、見境無しの料理の選択。
 とはいえ、さすがに豚の後ろ足の膝肉の煮込みの「紅焼元蹄」など、しっかり、どっしり、こってりの料理を注文することはしませんが、上海風味を堪能。野菜料理も、上海系の野菜の炒め物だったりしたものです。
 話がますますそれちゃいましたね。
 画像は、最近、見つけたお気に入りの「麻婆豆腐」。世田谷、経堂の「彩雲瑞」の「麻婆豆腐」です。