2011/04/02

'11年2月の「赤坂璃宮」銀座店~“大分フェア!の7

締めくくりの麵・飯、今回は「蟹肉燴炒飯/蟹肉のあんかけチャーハン」。これが予想外の旨さでした!
とろ味のかかった蟹肉の餡かけも旨い。それにもましてご飯が旨い。
ご飯はインディカ米風、ちょい固めの炊き上がりで、噛み締めると最初はしこしこ、やがてもちもち。同時に米を包みこんだ蟹肉の餡かけの旨味、だしがじゅわっと滲み出る。蟹肉の餡かけの上品でせんれんされた旨さ、素朴で実直そのものの米の味が、絶妙のコンビネーション。

ほんと言うと、私、とろ味のかかった炒飯、苦手です。日本の広東料理店でおなじみの「福建炒飯」、大衆的なラーメン中華店の看板メニューのひとつだったりする「天津丼」の類を体験してきたものの、素材の味、風味を台無しにするどってりぼってりの分厚いとろ味が大の苦手。

子供の頃、病気になると否応なく食べされられた砂糖味でごまかした溶いた片栗粉を思い出してしょうがない。トラウマ、ってやつですね。加えて、日本の中国料理の餡かけ、とろ味に特徴的な鉄壁のような重さ、厚さのトラウマ、ってのもあります。

ついでにいえば蟹肉に関しても……ほら、活きの蟹の茹で立てや甲羅や脚の焼蟹なら文句なしですけど、茹で蟹も時間が経てば妙な磯臭さがありますよね。それに冷凍物もやっぱりクセがあって戻しと調理に技が要る。缶詰の蟹、値段が高い割に缶詰特有の金物臭さってのはぬぐえませんから。

そんな蟹に関するトラウマ、すべて取っ払ってしまうぐらい、蟹肉の旨味、風味を生かした調理にまずは感心。椎茸やニラ、もやしなどの具も、味わいは穏やかで柔らかくて優しい。なんてところで味付けの決め手、やっぱり「だし」。すなわち極上の「上湯」にありってことを納得。

加えて、とろ味の付け加減が見事です。日頃の袁さんの炒め物や煮込み物での「とろ味」加減、さらっと舌をなでるぐらいの感じで実に控え目、手前の加減。日本の広東料理でのとろ味のつけ方なんかと比べれば極薄の感じで、さながら絹のベールをまとっているような趣き。それが本場香港の広東料理のとろ味つけなんですけど……
ところが、今回の「蟹肉燴炒飯」、とろ味の加減、少々多め。ですが、ぼってりどってりの厚みや重さは皆無。美味しい葛きりを食べてるようなつるんとろんの心地よい滑らかさ。で、極上のだし「上湯」の旨味、風味がじんわりじわじわ浮かび上がってくるという寸法。とろ味つけの料理でも、味の要は「だし」にあり、ってことを改めて認識。ご飯が旨い!絶妙の「蟹肉燴炒飯」でした。

ちなみに、過日、知人と「赤坂璃宮」銀座店のランチタイムに訪れたうちのかみさん。選んだランチセットの一品が「福建炒飯」。とろ味のかかった餡の出来栄え、文句なし。絶妙の「福建炒飯」だったとか。
「「だし」がいいからじゃない?」なんて私の話に、一瞬、味を思い出して沈黙したうちのかみさん、突然「そうそう、そうなんだよね!」