ちょい厄介な仕事を抱えていたもんで更新、滞りました。
ここんとこ60年代から80年代にかけての洋邦の名盤の企画での選出やら執筆。そればかりか当時のアルバムのシリーズものの監修企画の話などもあって、昔の資料を取り出し、てんやわんやだった次第。ビートルズなんかも振り返ったりして。かといって懐メロモードてわけでもありません。
そんな最中、6月の末に待望の「夏味」到着。埼玉県東松山の農業、加藤紀行さんの作った野菜です。武蔵地這胡瓜、青茄子、青唐辛子にじゃがいもがどっさり。
梅雨明けはまだですが毎年、加藤さんの野菜がこないことには夏が来た!という感じがしません。しかも、昨年に比べて一月早い「夏味」の到着。
春過ぎだったか、ここんとこ例年、夏の天候は不順続き。
おまけに今年はアイスランドの火山噴火などもあって「冷夏になりそうで、上手く育ってくれるかどうか」なんて先行き不安な様子でした。
それが今年はいつもより早くに「夏味」到着。
「どうしたんですか?」 なんて尋ねたら
「ええ、一生懸命がんばりました!」と、加藤さん。
ン?いつもはそんなに頑張ってなかったってこと?
嬉しいのは青茄子。こんなに早くに青茄子にありつけるとは思いもよりませんでした。
こんなことなら青木さんに連絡して福臨門の広東料理の季節の宴、再開が楽しみ。なんて思ってたら
「そ、それは、ちょ、ちょっと待ってくれませんか。頑張って早く収穫できたんですが、それが、どうも収穫が安定してない感じなので。もう少し、様子をみてからの方が……」と、後ずさり気味な様子。
武蔵地這胡瓜は、昨年、最初に届いたものと同様、真ん中の太いところは直径3センチぐらいありそうでうんと胴長。収穫遅れて、育ちすぎ、じゃないですか?なんて尋ねたら
「いや、ほんと、そのままにしておくと、一日、一日うんと成長するんですよ。朝と夕方でも、太さも長さも違いますから。でも、今回はエージさんのお好きな「胡瓜のサンドイッチ」にするにはうってつけだろうと思って、わざと収穫時期をずらして、太く長いのをお送りしました!」
なんて言われると、感謝、感激、ありがたい。
ほんとイギリス式の胡瓜の胡瓜のサンドイッチを作るには、普通の胡瓜だと細すぎる。かといって加賀太胡瓜だと大きすぎる。育った武蔵地這胡瓜がうってつけ。ですけど、そだった分、ちょい大味気味なのは否めない。ですが、程々の塩を振りかけてしばし寝かせると、瑞々しさをとりもどし、旨味凝縮。香りが立つようになるのが不思議です。
ウチのかみさん、胡瓜のサンドイッチには興味なし。
「生で食べても旨味も香りも乏しいから・・・そうだ、胡瓜のナムル!」
そんなことで、塩をまぶし香味野菜とごま油、それに仕上げに煎りゴマを振り掛ける辛味なしのナムルをどっさり。
面白いことに、これまた胡瓜の旨味、香りがみるみるむくむく、正体を現します。ですから、胡瓜がうまくて、食べ飽きない。それに加藤さんの野菜に特徴的な大地に根ざした野菜の底力を見せ付けてくれます。たっぷり食べれば清々しくって気分爽快。体の毒気、全部洗い落としてくれるみたいで、気持が良くって、元気なります!とかみさんニコニコ顔。
青茄子はもちろんタイカレー。グリーン・カレーです。
青茄子使ったフクザツで手の込んだ料理は福臨門におまかせ。
青茄子、緻密な肉質なのに、しっかり煮込んでも煮崩れない。旨くて、香り豊かです。
そして、今回の最大のヒットは激辛の青唐辛子。生のままで辛味があたり一面!なんてくらい香り強烈。青々しい爽快な味、香りに悩殺されます。それを4~5本、刻んでニンニクと一緒に弱火で煎り焼きにしてアリオリ・ペパロンチーニ。もちろん、試しました。
でも、それだけじゃ芸がない。いつもなら青唐辛子を微塵に刻んで醤油漬け。
それよりも!と思いついたのがペペロン・オイル。
エクストラ・ヴァージン・オイル一瓶に、生の唐辛子を刻んで漬け込んだ次第。
普通は一月ぐらい冷暗所に寝かせれば唐辛子のひり辛味が生きてくる、なんてことでしたが、翌日、瓶のふたを開ければ、もうすっかりペペロン・オイル、辛味のある風味ありあり!しかも、日々、辛さをましていくのに思わずコーフン。
でも、それだけじゃ物足りない。ってことで、柚子胡椒作りを思い立ちました。
青柚子を買い込み、青い皮を擦りおろし、刻んだ青唐辛子に混ぜ合わせ、擂り鉢で塩を加えながら粘りがでるまですりすりこぎこぎ。
ところが、青柚子の皮を擦りおろすのに、案外、手間取りました。おまけに擂り鉢ですりすりこぎこぎも、想像していた以上に手間取る作業。忙しい合間、柚子胡椒作りを思いついたのものの、それこそ寝る時間を惜しむことになるぐらい、時間くっちゃったりして。ま、仕事よりも食い気ですけど。
出来上がった柚子胡椒。市販のものとは大違い。旨さもさることながら、香りの立ち方、その風味、全然、違いますから。しかも、味わいが自然ですっきり。唐辛子ふんだんに使ってるのに甘味がある。市販の柚子胡椒、成分みると唐辛子、柚子、塩ってことですが、なんだかそれ以外にいろいろ入ってんじゃない?なんて、疑惑の眼差し。それぐらい、自然な味、風味のある柚子胡椒が出来上がり。
それでもまだ青唐辛子は残ってます。なんてことで、なんとか試みたかったアイデアを即、実行に移しました。青唐辛子を使ったラー油です。
ところが、作り方がわからない。ネットでレシピを検索しても、食べるラー油の話題ばっか。
みつけた!なんて思ったら、赤唐辛子の粉末、それに鷹の爪を使ったものばかり。
青唐辛子だから、爽快な青々しさのあるラー油が狙い、だったのですが……。
こうなりゃ、鷹の爪、赤唐辛子の粉末を使ったラー油作りのレシピをもとに、その作り方、プロセスを参考にしながら、青唐辛子に置き換え、いざ実践。
油の中に少量の刻み葱、刻み生姜、刻み大蒜に、八角、丁子、陳皮を加え、油を熱します。その温度を見計らい、ここぞというところで熱した香辛料入りの油、刻んだ青唐辛子を入れた鉢に注ぎいれます。熱い香辛料入りの油を注いだ途端、泡吹き状態。それを冷まして油が入っていた瓶に刻んだ青唐辛子、香辛料共々戻しました。
出来上がり早々は油の味、風味ばかりが際立つ印象。
う~ん、失敗かな。やっぱり、青唐辛子に熱した油を注ぎかけるのは乱暴すぎたかも。
青唐辛子の青々しい香り、風味、すっきり爽快な辛味、飛んじゃった感じ、とまあ、反省しきり。
ところが、です。翌朝、小皿に垂らして舐めてみたら、最初は油の味。ですが、やがてかすかに、そのうちじんわり青さのある爽快なひりっとした辛味、風味が次第に立ってきました。
お、やったかも!
それから数日、寝かせて味見をしてみたら、爽快なひり辛、辛味を増した青さのある激辛の味がくっきり、はっきり。麻婆豆腐を作る際、鷹の爪、どっさり油で揚げて即席のラー油作り、なんて普段からやってる私ですから、それとは明らかに異なる味、風味を持つラー油だってことはわかります。しかも、日々、辛さをましていきます。その爽快な辛さがたまらない。
いろんな素材と青唐辛子もラー油との組み合わせ、最高のマッチングを探索せずにはいられない。
ここんとこ、毎夜の食卓に青唐辛子のラー油が登場です。