2011/05/23

ゴールデンウィークにいいもん聞いた~その3

5月2日は「忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー~日本武道館 Love & Peace」。今年三回忌を迎えた忌野清志郎の命日に開催されたトリビュート・コンサート。仲井戸麗市、新井田耕造、さらには藤井裕、KYON、梅津和時、片山広明からなるメインバンドを主体に、忌野清志郎に縁のあるミュージシャンが顔を揃えて競演。それぞれ縁のある忌野清志郎作品を披露、という趣向。

Leyona、息子のKenKen、ノブアキとの共演も披露した金子マリ、途中、アコースティックセットでは泉谷しげるが原発批判を込めて「サマー・タイム・ブルース」、「ラヴ・ミー・テンダー」を歌い、あの「カヴァーズ」をほうふつさせる。さらに忌野清志郎訳による「イマジン」を歌ったゆず、肩の力を抜いた歌と演奏で実力、力量、懐の深さを見せた真心ブラザーズ、無垢で奔放なナイーヴな歌、演奏だったサンボマスター。

そうした中で強烈な印象を残したのが斉藤和義、奥田民生、ザ・クロマニヨンズ。噂の替え歌こそ披露しなかったものの「替え歌はまだだめなんですよ!なんでコメントした斉藤和義。「JUMP」、「どかどかうるさいR&Rバンド」のタフでワイルド、逞しさを身に付けた歌、演奏に「わ!すげえでかくなった」と感心。

そして奥田民生。歌ったのは「スローバラード」とRC時代の作品で仲井戸麗市が歌った「チャンスは今夜」。仲井戸麗市のトリビュート作で起用していた作品。どこかすっとぼけていてあっけらかん、なんてイメージと同時に、めちゃくちゃ濃くて熱いロック演奏を展開する奥田民生。当夜の会場に駆けつけた清志郎ファンの多くが「スローバラード」の真摯な熱唱に打ちのめされた様子。

私にとって「思わず、ゾク!」と興奮を覚えたのは奥田民生のギター演奏。随分前にも奥田民生のコンサートでそれを体験。タメを利かせたうねるギターのフレイジングは、まさにグランジのそれ。

グランジっていえば、パンク、ハードコア・パンクを下敷きにシアトルを中心に盛んとなったロックってことで認知されてます。ニアヴァーナやパールジャムはその代表。ですが、日本で見落とされがちなのは、それが生まれる必然、つまりは社会的な背景。つまりは時の大統領ロナルド・レーガンの経済政策が生んだ社会的な歪み、結果生まれた貧富の格差社会。グランジの担い手の多くは、その犠牲者の子息だった、なんてことがあるわけです。

当の奥田民生、そんなことを知ってか知らずか、タメの利いたうねるギターのフレイジングからは、そんなグランジを生んだ当時の社会的背景までを甦らせる、なんてところが「凄い!」なんて思う私です。ま、そんなこと思うのは私ぐらいなもんでしょうけど。

さらにザ・クロマニヨンズ。取り上げた「ROCK ME BABY」、「ベイビー逃げるんだ」、「いい事ばかりはありゃしない」のどれもが強力ダイナマイト。体を震わせ舌舐めずりしながら歌う甲本ヒロト、音の返りを確かめるようにしながらリフ、パワー・コードを奏でる真島昌利のギター。圧倒的なパワー、ダイナミズムに圧倒されました。

他にも生真面目で気弱な側面もある個性をさらけだしたトータス松本。堂々の存在感を発揮したYUKIと矢野顕子など、見もの、聞きものはふんだんに。4時間弱の長丁場のコンサートだけに、おやじ(私ですけど)、途中休息の要ありでしたが、素晴らしいコンサートでした。画像は奥田民生と梅津和時。撮影は有賀幹夫。