2011/05/19

ゴールデンウィークにいいもん聞いた~その2

5月1日には日比谷公会堂で細野晴臣の「細野晴臣『HoSoNoVa』コンサート」。
新作『HoSoNoVa』の発表に併せてのものですが、その新作が素晴らしい。
新曲に交えて「スマイル」や「ラモーナ」、「レイジー・ボーン」や「デザート・ブルース」など懐かしき作品のカバー作品も。

4年前に発表した「フライング・ソーサー 1947」では、カントリー&ウェスタン、といよりもかつてのポピュラー・ミュージックだったカントリー・ミュージックにアプローチ。ついで、昨年11月のスタジオ・コーストでのライヴでは(カントリー・)ブルースへの興味しきり、なんて感じでした。

そして今回は、細野自身が体験してきたポピュラー・ミュージックのルーツを探るという趣。目線、ライ・クーダーの最近の作品に似てます。けど、細野自身の体験、昔を振り返る。それを今に再現、というあたりが面白い。

今回のライヴ、アルバム『HoSoNoVa』をさらに進化させた感じで、ルーツ探しとその再現に余念のない細野晴臣でありました。そのランダウン/セットリストは、ネットのブログなどで公表済。

幕開けは「Rosemary,Teatree」。ついで「ラモナ」。バックを務めるのはアコーディオンの越美晴とサイド・ギターの高田漣。さらに「スマイル」でベースの伊賀航、ドラムスの伊藤大地が加わるという構成。

ボソっとつぶやくように歌う細野晴臣。 ジェームス・テイラーとの出会いで自分の声を見つけたという細野晴臣。 『HOSONO HOUSE』では遠慮がちに。やがて『トロピカル・ダンディー』や『泰安洋行』では伸び伸びと。 そして『HoSoNoVa』や今回のライヴでは肩肘張らずに余裕しゃくしゃく。

年季を経ての味わい深い歌。年季をへてなきゃ歌えない歌と味わいです。
無気力なようでいて、しっかり歌詞、メロディーを丁寧に、的確に表現というあたり、これからが勝負!という意欲が見え隠れ。

折からの放射能災害にあわせて、クラフトワークの「放射能」をアコースティック・バージョンで披露。そういえば「ただいま」もアルバムとは趣きが異なり、カントリー色濃いアレンジで。常に進化し続ける細野晴臣です。

ホーギー・カーマイケルの「レイジー・ボーン」から、鈴木茂が参加。さらに伊藤大地に代わって林立夫が参加し、ティン・パンの再現。そこに矢野顕子が加わり、さらには「無風状態」や「風を集めて」をソロで披露。さらに佐藤博も加わって、懐かしいティン・パン・アレー・ツアーが甦る。

ですが、私にとって興味深いのは細野晴臣と若いサポートの3人、高田漣、伊賀航、伊藤大地との組み合わせ。自身の体験を踏まえたポピュラー・ミュージックのルーツを探る細野晴臣にとって、課題のひとつが4ビート、スィング、シャフルとの取り組み。

ところが、伊賀航にしろ、伊藤大地にしろ、レコードやCDを通して形、様式はなぞることができても、体感した世代じゃないもんで、ビミョーにタイミングやグルーヴが違います。もっとも、細野晴臣も昔のまんまのリズム、グルーヴ感をそのまま再現する意図はないはず。ルーツ音楽との取り組み、その伝統の継承も、自身の目、体、体験を通し、しかも現代性を織り込んでなければ意味がない。

というあたりに高田漣、伊賀航、伊藤大地の起用の面白さがある。彼らの持ち味、個性、今の(若い世代のリズム、グルーヴ)感覚も取り入れ、歩み寄りながら細野自身の音楽を具現化、なんてところが面白い。もっとも、多分、伊賀航、伊藤大地の両君、暗黙の内に細野君にしごかれた?んじゃないでしょうか。
ともあれ止まることを知らない、細野晴臣は面白い。

画像は細野晴臣、伊賀航、伊藤大地のバック・ステージでのスナップ・ショットです。