2007/03/22

閑話休題~マカオ・香港の旅(18)

「麵」と言えば「小麦」。「麵粉」と言えば「小麦粉」だ。文字の順序を入れ替えると「粉麵」になる。中国本土では使われない、というか普通語にはない言葉のようだが、香港ではその言葉を頻繁に見かける。

 「米」を素材にした各種の「麵条」の形態である「粉」と、「麵」を素材にした各種の「麵条」の麺類を合体させた「米粉麵条」をひっつめた簡略的な表現である。ちなみにグーグルの辞書で調べたところ、繁体字→英語の翻訳で「noodle」と出ました!「麵類」の総称ということらしい。

 「粉麵」という言葉の前後に「粥」もしくは「飯」を付け加えることもある。たとえば、先に紹介した陸羽茶室の「各種粉麵飯品」のメニューなど、その典型的なものだ。さらに「粥粉麵飯」という表現もあって、料理本などの項目になっている。

 陸羽茶室のメニューにも明らかなように、香港の広東系の料理店では「飯」を使った各種の炒飯、あんかけ飯などとともに「粉麵」類も各種あり、「粉」、「麵」が各種常備されているものだ。 ちなみに福臨門にも「飯」、「麵」、「粉」に「粥」の各種の料理を紹介したメニューがあるのだが、見たという人は少なく、その存在はあまり知られてはいないようだ。

 潮州系の料理店でもそれらが常備されている。
 ところが、北京、上海、四川系の店では、「飯」、「麵」はあるが、「粉」をみかけることはほとんどない。しかも、「麵」の種類が広東系、潮州系の店とは異なる。

 さて、粥麵店。前述のように、広東系と潮州系がある。残念ながら香港のすべての「粥麵店」を制覇したわけではなく、私が体験してきた範囲での結論、というより、中間報告になるのだが、「粥麵」と看板を掲げている店の多くは広東系のそれ、と言っていいようだ。

 そのほとんどの店では「生麵」、「伊府麵」もしくは「全蛋麵」が常備されいる。「粗麵」といって、太めの麵を用意している店もある。また、細めの生ビーフンの「米粉」、幅広の生ビーフンの「河粉」も常備されている。

 そして、「粉麵店」と看板にあれば、ほとんどの場合、潮州系と言っていいようだ。 そういえば潮州には独特の「粥」があるが、潮州系の「粉麵店」では滅多に「粥」にお目にかかれない。潮州式の「粥」に出会えるのは潮州系の料理店、もしくは、潮州系の一部の「小食店」でのことだ。が、潮州系の「粉麵店」では「粥」がない代わりに、「粉」の種類が多くなる。

 「米粉」、「河粉」の他に「米線」がある。
 「米線」は「米粉」よりも細く、断面が円形状のものだ。「鏞記」などでお目にかかれる「瀬粉」に似ているが、それよりも細い。「瀬粉」は広東省の中山で生まれたものだから、潮州系の店にはない。その代わりに、潮州系の「粉麵店」には極細のビーフンの「米線」がある。生ビーフンだ。乾燥させた「米線」もあるが、「粉麵店」では置いてないようだ。

 さらに、イタリアのショート・パスタ風の生ビーフンの「銀針粉」がある。「銀針粉」という名称は、形状がもやし似ていることに由来するようだ。が、実際にはもやしよりも太い。 その「銀針粉」を、「龍髭粉」だったか、そんな名称で呼ぶことがあるようで、たとえば九龍城市にある「黄明記粉麵店」などがそうだったような覚えがある。「黄明記」のそれは、馴染み客には評判のものだが、数が限られていて、昼時になくなってしまうことが多い。

  潮州系の「粉麵店」では、牛肉、豚肉、魚のつみれが必ずある。牛肉のつみれの牛丸には、牛肉だけのもの、筋肉を使ったものなど、種類がいくつかある。店ごとに自慢のものがあって、牛丸を看板にしている店も少なくない。

 中でも有名なのは旺角にある「樂園牛丸王」だ。牛肉丸、牛筋丸の2種を常備している。尖沙咀の北京道と海防道の間、九龍公園径沿いにある海防道街市の中にある「徳發」も、牛丸、牛筋丸で有名だ。60年の歴史を持つ店である。

 魚のつみれ類の種類が豊富なのは潮州系の店ならではのものだ。
 それには、魚のつみれ団子の「魚丸」もしくは「魚蛋」。魚のすりみをかまぼこ状にした「魚片」もしくは「魚餅」がある。いずれも蒸したものだが、それを「炸」、つまりは揚げた「炸魚丸/炸魚蛋」、「炸魚片/炸魚餅」もある。

 さらに、薄く幅広い魚のすりみを巻いた「魚扎」があり、それにも「炸」した「炸魚扎」がある。
 また、魚のすり身を皮にした「魚餃」がある。「魚餃」は、店によっては「魚皮餃」という名称だったりする。

 紛らわしいのは「炸魚皮」というのがあることだ。それは魚の皮の揚げ物で、「粥麵店」、もしくは「粥」を専門にする店にもある。もっとも、広東系の「粥麵店」、「粥店」では「鯇魚」、つまり「そう魚」の皮がほとんどだが、潮州系の店では魚の種類が違うことがある。

  また、「墨魚丸」、すみいかのつみれ団子も潮州系の「粉麵店」、さらには小食店には必ずある。  それに潮州系の「粉麵店」では、「紫菜」、海苔を添え物にすることが少なくない。それは広東系の店ではありえないことで、潮州系の店ならではのものだ。

 画像は、湾仔の「潮興魚蛋粉」のメニューである。