③の原びれを加工した状態、また、料理名に使われる呼称には、「裙翅」、「鮑翅」、「散翅」がある。
「裙翅」は、先にふれてきた「群翅」のことで、料理名などには「裙翅」と表記されることが多い。
「鮑翅」は、尾びれ、また、一部、背びれも含むが、本来は「勾翅」、つまりは根元がつながり、扇状の形をしたもので、主に尾びれからとられるが、背びれが含まれることもある。
料理店などでは「包」ではなく「鮑」と記されるのは、音が同じなのと、ふかひれの大きさ、翅針の太さから、それを美化しての表現だ。
日本ではふかひれの姿煮としてなじみ深い「排翅」にあたるが、大ぶりで翅針の太いものは「鮑翅」と表記されることが多い。
むろん「排翅」にも大ぶりで翅針の太いものがあるが、「鮑翅」には劣り、区別されることが多いようだ。
「散翅」は胸びれであり、「片」と称されることもある。加工してのち、翅針がバラバラの状態になることに由来する。
もっとも、バラバラの状態になった屑ひれも散翅と称することから、ひれそのものが形状が大きく翅針が太いものを屑ひれと区別し、散翅と同じ発音である「生翅」と表記されるのが慣例となっている。
④の産地、収穫地の名称をつけたものとして、代表的なものに「金山翅」がある。
金山、すなわちサンフランシスコで水揚げされた太平洋産のサメの総称だが、その種類、品種は、多岐にわたる。
最も代表的なものが大ぶりのふかひれの「高茶翅」だ。
次いで「沙青翅」、「白青翅」、「五羊翅」などがある。
日本で最も水揚げ量が多く、日本の中国料理店で使用されることの多い「牙揀翅/ヨシキリザメ」、「摩加翅/モウカザメ」などもサンフランシスコで水揚げされている。
⑤で最も知られているのは「天九翅」と「海虎翅」である。
「天九翅」は2種ある。「牛皮天九翅/ジンベイザメ」と「那威天九翅/ウバザメ」だ。
サメの中でも最も巨大なもので、ひれの根元の翅針は箸の太さほどもある。
現在、「天九翅」とされている2種のサメは捕獲禁止の対象となり、現存しているのはかつて収穫したものに限られるそうで、希少価値もあり値段も高騰している。
ちなみに、マカオの西南飯店はかつて多量に天九翅を所有し、看板料理のひとつにしてきた。同店で箸の太さほどのある天九翅のふかひれ料理を食べたことがあるが、それはdancyu誌のマカオへの食の旅で紹介してきた。
「海虎翅/イタチザメ」も香港などではその名を広く知られ、超高級品種とされている。「金山翅」などに代表される「群翅」と並ぶものだ。ことに胸びれは「群翅」よりも形状が大きく、翅針は長く、太い、軟らかいのが特徴だ。
「金山勾」のなかで最上位にランクされる「金山雙頂勾」は、どうやら「海虎翅」であるらしい。
また、「海虎翅」はひれ自体の大きさから料理店のショーケースで飾られていることが多い。