広東料理には「燉」と称する湯煎蒸しの料理方法がある。
「燉」は、英語ではダブルボイルドと表記されているが、蓋付きの容器に素材を入れ、蓋を密封し、蒸す料理方法だ。
家庭などで「燉」の料理方法をやるとなると、蒸し器を使うわけだが、料理店には専門のスティーマーがある。
ふかひれの料理には「燉」の料理方法によるものが少なくない。
まず、広東白菜を入れて湯煎蒸しにしたのが「白菜胆魚翅」。
そこに、鶏を一羽、もしくは半羽を加えたのが「白菜胆鶏燉魚翅」。
宴会用の豪華なメニューである。
鶏一羽にふかひれを詰め、湯煎蒸しの「燉」で調理したのが「鳳呑翅(鶏呑燉魚翅)」。
その鶏を鳩に置き換えたのが「鴿呑燉魚翅」だが、私はまだ福臨門で食べたことはない。
食べたのは潮州料理店でのことだった。
潮州料理の店ではふかひれよりも燕の巣を詰めた「鴿呑燉燕窩」が一般的だ。
頼めば「鶏呑燉魚翅」も用意してもらえる。
ついでにいえば、先の「白菜胆鶏燉魚翅」は福臨門のグランド・メニューにあるが、「鳳呑翅(鶏呑燉魚翅)」、「鴿呑燉魚翅」ともに、顧客からの注文が無い限り滅多に作ることがない。
いわば裏メニューだが、「鳳呑翅(鶏呑燉魚翅)」に関しては、東京の福臨門のお勧めのメニューになったようだ。