呉昊著「飲食~香江」に紹介されている呉昊仔が入手した「南園」の菜譜は、実に興味がつきない。
従来の香港の宴席の大半を占めていた「八大八小」の構成を改め、やがては香港の宴席料理の構成内容の「十大件」の内容を知ることができるのも嬉しい。
それにも増して、次いで紹介されている「南園」で供されていた料理の数々を紹介した菜譜をみれば、興奮しないではいられない。
画像がそれである。まずは「鳳尾扒翅」を筆頭に「紅焼鮑翅」、「紅焼包翅」、さらには「蟹黄大翅」、「蟹蓉大翅」など、ふかひれ料理の数々が並んでいる。
上段の一番最後にはなんと「蟹黄燕窩」まであるではないか。燕の巣の蟹みそあんかけ仕立てである。料理名をみただけで、思わず涎がこぼれてしまう。
2段目に入って、干し鮑の料理が2種。それに続くのが「脆皮炸子鶏」(鶏の丸揚げ)、さらには「片皮焼鶏」まである。
鶏を焼き上げ、北京ダック風にその皮を食べる、という趣向のものだ。すでに当時、北京ダックスタイルの鶏の焼き物があり、北京ダック仕立てで食べるというスタイルが定着していたことを物語るものだ。
それら、鶏の料理の種類の豊富さにも目を見張る。さらに、続く頁では、法螺貝の料理があり、また、蝦の料理の数々が紹介されている。
魚料理の素材であるのは烏魚。淡水魚のらい魚の一種で、蒸し物の「清蒸」、それに豚肉などの細切りなどとともに醤油煮込みにする「紅炆」がある。
ついで「紅炆斑腩」があるのが驚きだ。「斑」と記されているからには、海水魚の「石斑」ということになるからである。
さもなくば、ライ魚の一種の山斑魚か、もしくは、大ぶりの淡水魚で、腹身の部分が旨い「鯇魚」(そう魚)をつかったものなのか。
その実態は不明であり、想像をたくましくするしかないのだが、ともあれ「南園」の菜譜は、見ているだけでも興奮を覚える。
そして、香港におけるふかひれ料理の歴史、足跡がたどれる、ということでも興味深いものだ。