2007/02/12

閑話休題~マカオ・香港の旅(12)


今回の超過密ハード・スケジュールによるマカオ・香港取材を敢行しながら、その間隙を縫って、香港の「粥麵」事情のフィールドワーク!を再開したのにはわけがあった。
 そもそもの発端は、昨年、5月、藤田恵美の香港、上海公演の取材を依頼された際、久々に湾仔のホテルに滞在。暇な待機の時間、湾仔界隈を散策。小食店、粥麵店の変貌ぶりを目の当たりにし、刺激を受け、これは再調査の要あり、と思い立ったのだった。
 以来、かねてよりストックしてあった粥麵店、粥麵事情を紹介した新聞、雑誌記事のクリップ・ファイルを再整理し、再検討。「新・香港的達人」のために準備していたものである。

 
 今回、マカオに到着した日の夜、滞在したホテルの広東料理店で、寝ぼけたような家郷菜を味わい、マカオらしさ、マカオならではの広東料理を再認識しながら、やはり、満足感を得られずにいた。で、ホテルの部屋には私好みの「酒」、「水」がなかったことから、夜の街に買出しに。
 7/11を見つけたものの、その商品構成がこれまたマカオ的、なのである。長洲の裏通りにある雑貨屋に匹敵するほどその内容は乏しい。しかも、実にいなたい、のである。思わず店の人に、近隣にスーパーは?と尋ねたら、英語が通じない。広東語で「超級市場は、有りや?なしや?」と尋ねたら、ついその先だというではないか。が、それもゆるくていなたい「超級市場」でありました。
 
 その帰り道、とある小食店の前を通った。なんだか「匂う!」ものがあった。飛び込んだことはいうまでもない。 店内に入りあたりを見回すと、ほとんどのテーブルの上にあるのは、麵料理と思しき品々と、小菜の皿々。壁のメニューを見て「雲呑麵」が看板だとわかり、早速、注文。
 「だし」は、いたって普通。並である。鶏ガラや豚骨などをベースにしたものだろう。「大地魚」や「蝦子」の風味もある。が、味は押し付けがましくなくて、穏やかだ。「雲呑」の具も「蝦」と「豚肉」のバランスが取れている、はみ出すものがない。いたってオーソドック、というより、ひなびた趣さえある。「雲呑麵」まで、マカオらしいのに思わずにんまり。
 やがて「あ、これって、昔、香港の「粥麵店」で食べたことのある味!」と思いあたった。懐かしい思いにかられた。
 その翌朝、滞在先のビュッフェで「雲呑?」を見つけ、食べた話は前述の通りだ。そうなのだ。眠っていたものに火がついたのだ。
 香港に到着した日、取材の関係からホテルから外に出られず、昼食に取ったのがルーム・サーヴィスの「叉焼雲呑麵」だ。
 
 「だし」は上品で、明らかに「二湯」が使われている。「雲呑」の蝦は新鮮で、ぷりぷりとした噛み応えのあるぶつ切りの身を混ぜ合わせてある。80年代半ば以後の、ホテルのルーム・サービスの「雲呑麵」に特徴的なものである。
 但し、叉焼は、今、ひとつ。焼きが足りず、香りが乏しい。厚切りだったのも、全体のバランスからすれば、につかわしくなかった。
 そういえば、かつては滞在先のホテルのルーム・サーヴィスやコーヒー・ハウスの「湯麵」や「炒飯」を必ずトライしたものだ。急いで食事を済まさねばならないこともあったからだ。
 といって、不味いものは食いたくない。その為に、あらかじめ怠り無く下調査していたのである。
 ちなみに、コーヒー・ハウスでは「湯麵」や「炒飯」よりも、「海南雞飯」を目当てにしていた。とはいえ、そのほとんどが「並」の味、アヴェレージだったのだが、案外、好んで食べていたのが、今はなきハイヤット・リージェンシー・ホテルのコーヒー・ハウスのそれである。
 香港に到着した日の夜、「生記飯店」での食事に不満が残っていた。そして、カミさんが寝静まったのをみはからい、近くの7/11に雑誌やらあれこれの調達にでかけたところ「羅富記」の軒尼詩道店が開いているを見つけ、思わず飛び込んだ。「雲呑麵」を注文したことはいうまでもない。以後、連日「雲呑麵」を食べ続けたのであった。
  香港を経つ最後の日、ぎりぎりまで取材で昼食もままならず。空港に向かう道すがら立ち寄ったのが、これまた「羅富記」。もっとも、私は「雲呑麵」ではなく「牛腩撈麵」。ついでに「浄鮮蝦水餃」にした。というのも、最後の楽しみにとっておきたい「雲呑麵」があったからだ。
 「羅富記」に立ち寄ったがために、空港の到着はチェック・インぎりぎりの時間。そして駆けつけたのはキャセイパシフィック航空のラウンジである。そこに「麵」のコーナーがあるのだ。
 メニューは2品。上海風の「擔々麵」と、広東式の「雲呑麵」。 「擔々麵」は、具にしっかりと味がつき、いきなり食べてガツンとくるインパクトがある。が、私には味がちょっと濃い感じだし、いきなりガツンの味も、そのうち飽きる。で、パス。そう、一応、試したことがあるのです。
  「雲呑麵」は、「麵」、「だし」、具の「雲呑」のいずれともスッキリとしていて、上品で、洗練されている。街中の粥麵店のように「大地魚」や「蝦子」を味の要にしたものではなく、料理店で出会える「二湯」をベースにした「だし」である。
  具の「雲呑」も、蝦と豚肉、それに調味のバランスがとれている。街中の粥麵店での「雲呑麵」とは明らかに趣が異なるもので、そのインパクトにはいささか欠ける。味の濃さを求める人には不満なのに違いない。蔡瀾さんなら、きっと文句をつけるに違いない。今度あったら、聞いてみることにしょう。私はOK。「口」にあってますから!
  そのラウンジの「麵」コーナーだが、「文華酒店」、マンダリン・ホテルの食品部によるものだってことを、今回、初めて知りました。 画像はその「雲呑麵」です。