2007/02/07

閑話休題~マカオ・香港旅行(10)

香港にも、粥、麵にうるさい人がいる。粥通、麵通がいる。
 そうした人々がまず口にするのは、あそこのあれ、ここのこれが「旨い、美味しい」ということよりも、まずは「自分の口にあってるかどうか」ということだ。あくまでも自分の「舌」が中心、主体であり、すべての価値判断のもとになっている。

 自分の口にあった味を求める、というのは至極当たり前のことだ。そして、自分の口にあってこそ、旨い、美味しい、ということになる。香港人が語る「旨い、美味しい」という言葉の背景には、そうした事実、現実があることを見逃せない。
 たとえば「美味しい粥、麵屋はどこ?」という質問を投げかけたとする。粥通、麵通を自称する人なら、即座に店の名前を挙げるに違いない。それを語るのが自慢だったりするものだ。
 さらに、その理由を挙げてくれるはずである。と、同時に逆に問い返されるはずだ。
 「で、あなたは、どういう麵、出し、具が好みなの?」と。
 その答え次第で、さらに詳細な回答や説明が返ってくることもある。
 あるいは、「そうか、なら、どうだろうね」という答えが返ってくるはずだ。

 粥通、麵通でなくとも、好みの店があれば、教えてくれることがある。
 が、やはり、一般的には、その人が語る「旨い店、美味しい店」あるいは「旨い麵」というのは、彼の口にあったものであり、絶対的な価値観によるものではないことが明らかになる。

 そして、粥、麵通でもなく、ごく普通の人に同様の質問を投げかけた時、「う~ん、○○、かな」と、いささか消極的な答えが返ってくることが多い。圧倒的多数を占めるといってもいいだろう。というのは、私の体験に基づく話である。
 
 そうした人々に、「じゃ、普段、粥、麵を食べるなら、どういう店で?」と追求すると、たいていの場合、返ってくる答えは 「う~ん、近所の店」である。
 なら、なんで「○○」と店の名を口にしたのか。
 その場合、その人が実際に行った体験がある場合もある。が、たいていは、耳にした評判をもとに教えてくれたりするものだ。
 
 さすれば、どうして近所の店と言う答えなのか、問い詰めれば、「いつも行ってるしね・・・」と、答えはあいまいになる。
 さらに、話を問い詰めれば、要はなじみの味、そして、安心できる味だから、といのがその理由だったりする。
 もっとも、その「近所の店」というのも、不特定なものなのか、といえばそうではない。
 何軒か試して、行きつけの店になった」というのが大半を占めるのだ。
 そう、自分の「口」、「舌」にあった味を捜すプロセスを経て、立ち寄る「近所の店」なのである、という事実が判明してくるのである。
 たとえば、香港の麵通は「麵」、「だし」、「具」にうるさい。
 それも、当然、自分の口にあっているか、好みのものであるかどうか、といういことを基準にしての話だ。

 それは、日本のラーメン事情、ラーメン通が吟味するところとかわりない。そのままである、とも言える。
 香港の麵で最も一般的なのは「生麵」である。小麦粉が主体で、かん水が使われている。家鴨の卵も加えられている。
 香港の麵通が問題にするのは、その製造過程である。つまりは麵の打ち方だ。
 かつては、太い竹の棒で混ぜ合わせた粉をのしたものだ。が、今では機械打ちが主流となった。
 そして、生麵以外に、鶏卵をつなぎにした「伊府麵」がある。また、細めのもの、幅広のものと2種ある「辧麵」がある。
 もっとも、粥面店で多いのは、「生麵」と「伊府麵」だ。ほかに、米の粉を素材にした幅広ビーフンの「河粉」、細めのビーフンの「米粉」がある。

 
 そして「だし」。これは店によって異なる。だからこそのおもしろさなのである。
 「粥麵店」の「だし」は、経済性から言っても一般の料理店とは異なるのは当然な話だ。
 一般の料理店が「上湯」をとるように「老鶏」、「痩肉」、ましてや「火腿」を使うことなどありえない。
 基本は鶏がら、豚骨などだが、豚骨の使用については慎重な店もある。
 それよりも、「大地魚」(干したひらめ、時には、干したかれいをふくもこともあるようだ)、それに「蝦子」(蝦の子を乾燥させたもの)が使われることが多く、その使用量、扱いの按配が味の決め手になる。
 店によっては、地元産の小魚を煎り焼し、煮出してとっただしを使う店もあるようだ。そこが工夫のしどころである。
 と言う話など、昆布やだしじゃこなどの海産物を、だしに加えるか否か、という日本のラーメンの出しの話にも通じる。
 
 しかし、香港の麵店の「だし」は、濁っていたり、白濁させることはない。ということから、豚骨の使用は加減する、ということになるようだ。
 
 そして「具」。最も一般的なのは雲呑、蝦餃である。
 ことに雲呑が最も好まれているわけだが、まず、雲呑の大きさ、その形態、皮の食感、具の蝦と豚肉の比率、及びその味付け、がポイントである。
 それぞれ店ごとに独自の工夫がなされている。客はそれが自分の口にあっているかどうかを問題にする、という次第なのである。
 私の好みですか?今のところ、麺、出し、具のバランス、味わい、風味からいえば、粥麺屋では湾仔の「永華雲呑麵家」の「雲呑麵」ってことになります。画像がそれです。