2007/08/07

夏の広東地方の郷土料理のパート②の②

















 冬瓜を素材にしたスープが、大脷蓮藕鱆魚煲豬爭(蓮根、干したこ、豚肘肉、豚舌のスープ)へと変更。
 そうそう、豬爭、厳密には「筝」の左に「足」偏がつく。一般には「肘子」と呼ばれる部分で「前肘子」と「後肘子」があって、中国や香港、欧米では料理方法も異なる。 日本では後ろ足の腿肉の下部を「どんぶり」と称することもあるそうで。そう、アイスバインに使われる部分です。が、前足部分も後足部分も「脛肉」と称するのが日本では一般的、なんだそうです。

 話を戻して、蓮藕鱆魚煲豬爭。広東地方西南部、順徳地方の代表的な煲湯のひとつ。ということもあって一挙に盛り上がったのは、やがて登場してくる仔鳩の料理である「脆皮焼乳鴿」と、同じ地方で生まれた料理。もしかしてそれを考慮して用意してくれた煲湯ってことになりますから。
 胸がときめきました。

 そして、涼瓜炒帶子蝦球(貝柱、蝦、苦瓜、黒大豆みそ炒め)についで登場してきたのが、冬瓜火腩炆腐件(冬瓜、焼肉(皮付き豚あばら肉の焼き物)、板湯葉の煮込み)。

 これも夏の季節にはうってつけの料理。香港の夏、広東人にとっては欠かせないお惣菜。郷愁を覚える味、風味です。が、福臨門ですから、技がある。上品で洗練された味、風味。料理として完成された一品です。

 冬瓜の果肉そのものは無垢で淡白。それこそ清廉な味わいです。水分をたっぷり含有してることから、長期保存も可能で鮮度が落ちにくい。が、その分、調理にあたって、どれだけ果肉の水気を抜くかというのが、下拵えの重要なポイント。調理した後の果肉の透明感、滑らかな舌触りがないと、冬瓜を食べる意味がない。そう、 冬瓜そのものの下処理、下拵えが難しい。
 そのプロセスを経た後は、冬瓜にいかにだしを煮含めさせるか。
 ってことは、だしそのものの質が問われるわけです。それが旨さの決め手のひとつになる。
 が、その点は申し分なし。というよりも、完璧と言っていいほど。だしの旨さ、煮含めの按配が見事です。

 それに、この料理に欠かせない火腩です。皮付き豚のあばら肉の焼き物の「焼肉」。
 日本の福臨門の焼蝋、焼もものの技のすごさ、味、風味の旨さは格別です。
 かつての銀座店や二子玉川の高島屋でテイク・アウト。暖かいご飯にのっけて、たれを工夫し、焼蝋飯に。そして、表面はパリパリとクリスピー。脂身と肉がサンドイッチ状になった皮付きの豚ばら肉の焼肉は、豆腐と煮込み蝦醬で味をつけて煮込む「大馬站煲」には欠かせないものでした。



 冬瓜、焼肉の旨さもさることながら、目を見張ったのは生湯葉の揚げ物。生湯葉をミルフィーユ状に重ねて揚げたもの。最初はさくとした舌触り。噛み締めるとミルフィーユ状に重なった湯葉は、チュウイーな触感。と同時に、味付けされただしが口中にほとばしるという寸法。

 歯触り、舌触りの触感の快感だけでなく、ほとばしる味のついただしの旨さに
「何、これ!この旨さ!」
と漏らして、後は絶句。その余韻をしっかり味わいました。
 その下拵え、調理、味付けは、プロフェッショナルな技を見事に発揮したもの。


「あのう、これ、おかず、なんでしょ?普通なら、ご飯がほしくなるおかずでしょ?
なのに、ご飯なんかいらないし、ご飯と一緒に食べるのがもったいなくなるぐらい、旨いですね。
極上の、雲上の料理だ!
 こんなおかず、家で作れるわけないし、食べてる人間なんていっこないでしょ?」
と、福臨門製の「おかず、お惣菜」に感心しきりの青木さん。
「う~ん!」とうなりながら、しっかりたいらげてました!


私にとってもこの日のハイライトだった一品です。