2009/08/09

夏到来!~09年7月の「赤坂璃宮」銀座店の7

 そうそう「馬拉盞(醤)」。 「蝦醬」でも固形の「蝦膏」を使い、干し海老の「蝦米」、干し葱頭、ニンニクに唐辛子を素材にしたものが一般的。

 そういえばマレーシア、インドネシアには「サンバル」といって塩漬けにした唐辛子をベースに、香味野菜なども加えた辛味調味料があります。それを「馬拉盞」だとする人もいるようですが、香港あたりだと「サンバル」はやはり「(馬拉)辣椒醤」、もしくは「(印尼)辣椒醤」と言うのが一般的な通称。

 マレーシア、インドネシアには「サンバル」とは別に唐辛子を塩漬けにしただけのものもあります。以前、クアラルプールに出かけた際、中華系の市場と隣り合わせになったマレー系の市場の唐辛子専門店でそれを発見。

 店先で味見させてもらったところ、辛味だけじゃなくて、フルーティな爽快感や甘味がある。なんてことで、たっぷり買い込んだことがあります。名前を忘れちゃいましたが純粋な唐辛子味噌で、かといって「サンバル」と言う名前ではありませんでした。

 「馬拉盞(醤)」は、そのの名称からするとマレーシア産かと思いがち。
 ところが、実際に一般に流通し、香港あたりで広く浸透しているのはタイ産のそれ。
 しかも「馬拉盞」は「蝦醤」でも固形の「蝦膏」、干し蝦の「蝦米」、唐辛子に香味野菜がふんだんに使われているものが多いことから「XO醤」の原型、それを生むきっかけになった、なんて説があるのが面白いところです。

 そして「馬拉盞通菜/空芯菜のマレーシア風炒め」。 「空芯菜」の炒めものといえば、シンプルに生姜の細切り、ニンニクの微塵切りなどの香味野菜と炒めあわせたもの。アミの塩辛ともいえる「蝦醤」、それもペースト状のもの、それに固形の「蝦膏」風味のもの。「腐乳」に唐辛子の小口切りの「椒絲」を加えたものなど、どちらかといえばクセのある調味料との組み合わせがグッドです。  
 「馬拉盞通菜/空芯菜のマレーシア風炒め」ってことですから、山下さん、柏木さんに頼んでどんな、それにどこの「馬拉盞(醤)」を使ってのものなのか、聞きそびれましたが、多分、タイ産のそれのはず。

 袁さんが調理したこの種の料理、目の前にした時、ふっとそのクセのある香りが鼻をよぎる感じで、会議に夢中だったりすると、気がつかない。
 それが、口にして、噛み締めた途端、クセのある味わいがじわ~、喉奥の鼻腔を独得の風味がくすぐり、鼻筋の裏にぬけていく。「馬拉盞」の使い方、按配が見事です。

 それより「空芯菜」、葉先から根元まで、一本そのままつながってます。それでいて、葉先は「空芯菜」の葉の味わい、一方で、根元の茎のあたりの味わい、全く違って、それぞれの味、風味、えぐみ、苦味の味わいの両者の対比が、噛み締めれば噛み締めるほと、味わえば味わうほど、くっきり、はっきり浮かび上がる。

 「すげえ!」と思わずひとりごち。
 「空芯菜」の葉と根元の状態を把握し、その対比を心得た火の通し方、味付けの按配の見事さ。「鑊気」すなわち「鍋の気」にあふれた調理、火の使いの鮮やかな鍋仕事の妙に、感心しきり。袁さん、すごいですね

 ふとみると「空芯菜」に絡んだ生姜の細切りの細さ、長さ、そうです「板」仕事の細やかさに目を見張る。なんて、いいながら、もぐもぐ、歯に触れた「パリ」とした触感。しかも、噛み締めれば香ばしい風味が。

 「あれ?これって「蝦米」?」
 そうか「馬拉盞」ですから、干し海老の「蝦米」があって当然だ。しかも、ペースト状の「蝦醤」以上に、旨味とこくがあるのは、固形の「蝦醤」の「蝦膏」だからでしょう。

 暑い夏の盛りにこそ、味、風味を増す「空芯菜/通菜」。
 しかも、旨味、こくのある味付けの「馬拉盞通菜/空芯菜のマレーシア風炒め」。
 香港、広東地方ではごくありふれたお惣菜。家庭でも作りますが、プロの技、味付けは違います。

 なんてことない「馬拉盞通菜/空芯菜のマレーシア風炒め」のようでいて、先の「乳香脆排骨」ともども、香港の、広東料理の家庭料理、郷土料理の「家郷菜」の豊かな味わい、その奥深さを改めて認識しました。