2008/11/29

「香港的小菜」~11月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 2品目は「時蔬XO双蚌/ミル貝とホタテ貝柱のXO醤炒め」。















 海鮮の魚介、それもミル貝に貝柱という組み合わせが実にゼータク。香港の広東料理店の海鮮料理のメニューにありそうでいてないかも。というのは香港だと海鮮を看板にする店で、貝柱といえばタイラギの「帶子」がほとんど。それが日本の場合にはホタテ貝の貝柱が使われます。

 そんな貝柱、生のまま刺身にして食べるのもいいですけど、火を通せば旨味凝縮、風味を増します。そういえば我家ではもっぱら昆布〆にして食べることが多い。で、中国料理、広東料理で火を通すには油通しの「油泡」、両面を油焼きにする「煎」などがあります。

 いずれも素材をいきなり油通しや油焼きにするわけじゃなくって、それぞれ下拵えあり。下味つけるってこともありますが、粉をまぶして素材を包みこみ、調理ってことが多いようです。で、今回はミル貝、ホタテの貝柱、それに、季節の野菜類をそれぞれ「油泡」したあとで、最後に一緒に炒め合わせ、「XO醤」で調味、ってことでしょう。

 ミル貝はこりっとした歯触り、噛み応えのある触感。それに対してホタテの貝柱は、すっと歯が入る柔らかさで、ほどほどのねっとり感もあり。貝2種の触感の対比が面白い。しかも、火の通し方が絶妙。貝類独得、特有の甘さ、旨さがいきなりガツンではなくって、繊細で緻密な味、風味が浮かび上がるという按配。繊細で軽く、上品な味、風味に思わず「わお!」なんて思いました。

 その味付け、風味、まさに香港のそれ!だったからです。 もしかして一般の好みに照らし合わせると、味がたんない、なんて言われるかも。そうなんです、香港の広東料理、海鮮料理の味付けって、日本で想像する以上に軽くて、すっきり、さっぱり、なんです。

 野菜は蓮根、慈姑、パプリカ、さやえんどう、もやしです。それに香味付けの葱の根本の太い部分も。その蓮根、慈姑のぱりぽりの触感の対比がこれまた快感!パプリカのくたっとした感じ、さやえんどうの青みが爽快。もやしは、しっかり根が切り落とされていて、さくっとした歯応えですっきり味。

 それより、味付けは「XO醤」なんですが、いかにも「XO醤」を使っております!なんて押し付けがましさがない。それでいて、「XO醤」の味、風味があり、という過不足ない分量、加減がまた憎い。

 そうです、これまでなんどか触れてきたように、「XO醤」に限らす、「腐乳」にしろ「蝦醬」にしろ、日本の広東料理店におけるその種の調味料を使った料理のほとんどは、ふんだんに使いすぎ、という傾向が強い。これ見よがし、なんてこともありますし、素材の持ち味を無視した味付けが多いもの。ま、日本の中国料理は味本位で、濃い目の味が好まれる、という客の要求に応えるってこともあるんでしょうが、それにしても行き過ぎの感、否めないことが多いもの。

 それにくらべてこの「時蔬XO双蚌/ミル貝とホタテ貝柱のXO醤炒め」。調味の加減、按配、繊細で、洗練された味、風味なのが印象的。それより、ここんところの譚さんの料理、メリハリの利いた力強さが特徴。なのに、この料理、味付け、香りが違って、譚さんの料理でもなし・・・・。

  そんなところに大藤さん「あの、本日、譚は所用がありまして、もうすぐ到着するかと思いますので」なんて話でした。「ってことは、これ、袁さんの料理?」と尋ねると「ええ、そうです!」なんて大藤さんの答え。その話に、疑問氷解。

 袁さんというのは袁國星さん。99年香港からやってきて飯田橋のホテル・エドモンドの「廣州」の料理長を今年の6月まで務めていた人物。そして今は「赤坂璃宮」の銀座店の料理長に。今年、46歳だったか、ともかく、繊細、上品で、軽い味。それでいて、風味が豊か。これが袁さんの料理なのか!
 まぎれもなく香港の味! と、新しい発見に胸がときめいたのでありました。