2010/10/31

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 続いて「梅菜蓮煎餅/漬け菜と蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」。

 「蓮藕餅/蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」は09年5月にも登場。 もっともあの時は「家郷蓮藕餅」ってことでした。
 それも豚挽き肉に小ぶりの蓮根、擂り下ろした蓮根に、海老の擂り身が混ぜてあありました。
 小ぶりの賽の目に切り分けられた「蓮根」の「バリ!ボリ!」の触感、噛み締めれば豚肉と海老のすり身の旨味、さらには擂り潰した蓮根のざらっとした触感とほのかに泥臭くえぐみがあり、なんて按配でした。

 ところが今回の「蓮藕餅」、前のとは違ってました。蓮根は賽の目に切られていて、ばりぼりの触感とほくほくした味わいを残してます。さらに、豚挽き肉に擦り下ろした蓮根に「梅菜」加えてあります。
 「梅菜」、そうです客家料理で御馴染みの中国の南方に多い漬物で、芥子菜を一度漬け込んでから天日干しにし、さらに漬け込んだもの。醗酵したひね味に甘味が加味されているのがその特徴。

というわけで前回の「家郷蓮藕餅」とは味も風味も異なります。
「これ、ご飯と一緒にたべたくなりますね!」
なんて話も出るぐらい、よりお惣菜的な一品です。
 こういう「蓮藕餅」、どうしてだか日本の広東料理店でお目にかかれないのがホントに残念。
 続いて「冬菜蒸鮮魚/冬菜とイシモチの蒸し物」

 「冬菜」は細長い形状の「天津白菜」をニンニクと一緒に塩漬けにしたもの。もともとは白菜の塩漬けだったものが、他に香辛料を加味するようになったとか。それもニンニク入りのものが評判を呼び、北方から南方の広東地方、東南アジアの華人社会に広まっていった、といった歴史もあり。

 とまあ、09年4月に「東麗蒸鮮魚」を紹介した時に触れてきたとおり。
 あの時の魚は「あいなめ」でしたが、今回は「いしもち」。
 そういえば、「冬菜」、天津産の「冬菜」だったのにちなんで料理名「東麗」となってましたが、今回はそのまま「冬菜蒸鮮魚」。
 「いしもち」はスーパーで見かけることも多く、手に入れば煎り焼きした上に生姜の千切り、さらには大根の千切りをたっぷり加えて長時間煮込みます。するとスープは白濁。「いしもち」の味、風味を吸い込んだ大根が旨い。
 今回の「冬菜蒸鮮魚」、「冬菜」のひね味を吸い込んでいます。
 ところが塩味がしっかり、かと思えば、むしろほのかな感じ。しかも、塩味だけじゃなくて、独特の甘味もある。どうやら赤坂璃宮特製の「海鮮ソース」を隠し味にしのばせてある様子。それがなんとも効果的で、味わい複雑、しかも、重層的。なんとも心憎い味付け、風味です。
 もとより、魚を蒸すって案外難しい。魚の火の通し加減、それも切り身ならともかく、丸ごとの魚一匹を蒸すとなると、その見極めが厄介。素人にはなかなか出来ない技。年季、経験を要します。

 そんな蒸し加減も絶妙なら、隠し味を忍ばせた味付け、風味も文句なし。素朴な家庭料理なんですが、ひと手間、ふた手間かければ、こんなにも美味に! なんて、袁さんの手腕に脱帽です。

2010/10/11

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店

 今頃になって6月の「赤坂璃宮」銀座店での月例のメニュー紹介なんて、間の抜けた話ですが、やっぱり、記録に留めておきたい。ですが、4ヶ月送れですからいつもより手早く簡潔に。
 まずは「前菜四拼盆/前菜四種の盛り合わせ」。
 画像、右から文旦、豉椒鶏、叉焼、焼肉、みょうが、金糸瓜、パプリカ。奥が海蜇。

 「ウォ、肉の切り方、前よか厚くなってる!」なんて声が上がります。
 そうです、伊達鶏の辛味醤油漬け、皮付き豚バラ肉の焼き物、切り方が分厚くなってしっかりした歯応え。

 TVのバタラエティや食関連の番組で、タレントや芸人の食べ歩き、それも肉の試食で開口一番「柔らかい!」とのたまう御仁の多いこと多いこと。

 「柔らかい」ってのが「美味」の表現に定着してしまったのには恐れ入ります。 そうした方々がほめそやす「柔らかさ」ってのは、実は肥育された牛肉だからじゃないですか?
 本来、肉は噛み応えのある弾力があるもの。それを噛み締めてこそ、肉の味わい、風味があるのをご存知ないらしい。

 もっとも「美味」ではなく「美食」の観点、しかも、中国の宮廷料理の歴史を紐解けば「柔らかさ」というのは、様々な触感の中でも重要なポイント、だったのは事実。
 なんせ、宮廷のやんごとなき方々の多くは生(性)への執着から滋養強壮になるものはなんでも。

 とはいえ、多くは御老齢なんてことから、柔らかい触感というのは必須の条件のひとつだったわけです。なんてことからすると「柔らかさ」をほめそやす、タレント、芸人の方々は、やんごとなき方々と嗜好が御同様? な、ばかな!

 ところで、今回の前菜、叉焼、焼肉の皮のパリ感、噛み応えはしっかりで味わいあり。
 ですが、辛味醤油漬け、前々からちょいと気になってことですが、皮が薄く、皮裏の脂肪質も足りないせいか皮のぱり、さく感が乏しいのと、肉質が緩い。すっと歯が入るような弾力がないのが物足りない。

 付け合せの「くらげ」は、ぽりぱりの触感が良かった。もっとも、少々塩加減が強めなのがきになります。
 野菜類はそれぞれ少量ながら、金糸瓜、パプリカ、素材の生かし方、ばっちりでした。
 それから文旦、沙田柚の「柚皮」を元に、それと種類が同じ日本の文旦の皮を干したものを戻したんでしょうか。 詳細は尋ねませんでしたが、味付けはともかく、じゅわしゅわの触感「鋭い!」と思いました。

 そして「湯」。いつもなら季節の具材を取り入れ、日常素材と組みあせて長時間煮込む「老火湯」か、湯煎蒸しにする「燉湯」ですが、今回は「蟹肉冬瓜羹/蟹肉と冬瓜のスープ」

 「蟹肉」に、体熱をさげてくれる効果のある「冬瓜」を組み合わせたもの。

 「火腿」の千切りがさりげなくその存在を発揮。
 しかし、なんといっても「だし」、それも上質の「上湯」の旨さ、風味が光っています。

 洗練された気品、風格のある奥行き深い味わいが、食べ進むごとにじわじわひたひた押し寄せてくる。もうお手上げ!

 「わ、これすごいや!」と、思わず唸ってしまう見事な「湯」でした。

2010/10/05

2010年の中秋節

 あっという間に10月です。8月半ばに「中性脂肪過多~血がどろどろ」をアップしたまま、9月のブログはすっ飛ばし!その間、お見舞いのメールやら電話、それにブログ・アップの催促も頂戴しました。嬉しい限りです。
 で、件の中性脂肪過多、栄養士指導による食事を実施中。ですけど「結構、手前勝手に都合よく解釈してやってんじゃない?」なんて鋭い突っ込みも!「を、を!中らずと雖も遠からず」とまあ、その辺りの返事は曖昧に。
 もっとも、知人から豆腐や豆乳、湯葉に大豆、頑丈な夏野菜の支援もあり、食事内容に気を配り、一度にばか喰いというのはやめて分食を心がけたことからか、再検査、再々検査の結果は良好。数値、一気に10分の1にまで落ちました。
 「やった、これで食事制限もなくなる!」と喜んだのも束の間
 「いい感じですね。この調子で年末まで食事は栄養士の指導通りに続けてください!」と、代謝科の先生がキッパリ。
 そ、そうですか、そうですか。
 実は再検査、再々検査の間に医師からの助言もあって血液だけでなく各種検査を実施。胃、それに大腸の内視鏡検査と相成りました。近頃、胃カメラって喉からじゃなく鼻から挿入なんですね。ところが、私、鼻の粘膜、過敏症で弱いせいか、内視鏡を鼻から通すのが痛くって痛くって大変でした。以前のように喉から検査してもらうほうがよっぽど楽。
 もっとも、PCのモニターに映し出される胃カメラ探検の模様、これがなかなかの見もの。思わず食い入るように見つめてました。わが胃ながら、ピンク色してぬめっとした感じの胃壁がなんとも旨そう!刺身にして喰う、そうだ、韓国式のアレで……なんて具合です。
 「そろそろ胃にはいりま~す」とか、「ここから十二指腸ですから」なんて話を聞くと 「を!ここが「肚尖」か!」と豚の胃の食道と十二指腸の連結部を素材にした「肚尖」の料理の数々が思い浮かびます!
 大腸の内視鏡検査では2日前から食事制限。おまけに3時間かけて胃、大腸をすっからかんにする洗浄液を2リットルも飲まされたのに難儀しましたが、内視鏡での大腸内探検もこれまた見ものでした。
 ブログ休載中、中性脂肪過多の話と共に問われることが多かったのが月例の「赤坂璃宮」銀座店の報告。読んでくれてる人がいるってだけでも嬉しくなります。実は下書きも画像も用意して準備万端。ところが色々あってアップしないまま放置状態と相成った次第。それも6月以後未掲載なんてことになってしまいました。ですから、これから3ヶ月分、おいおいと。
 そういえば、「赤坂璃宮」の飯田橋店も再訪。これがまたなかなかの内容でした。他にも打ち合わせの際には目ぼしい店を選んで、とまあ食事制限ありの食事療法施行中の身の上ながら、道を踏み外すことも度々で。
 おまけに、今年も中秋節の前には月餅が続々到着。中性脂肪過多にはもっての他のはずですが、旨い月餅はこの時期でないとありつけませんから、その機を逃せない。
 蓮の実餡の蓮蓉、白い蓮の実餡の白蓮蓉に、塩漬け玉子の鹹蛋が2個入りの雙黄、3個入りの三黄。伍仁(糖蓮子、瓜子仁、杏仁、芝麻、欖仁)に火腿、糖冬瓜などによる伍仁金華火腿など、各種が勢ぞろい。
 私の一番の好みは、以前、紹介しましたが九龍城市城南道の「和記隆」の「百合芋泥月餅」。
 しっとり、ねっとりのタロ芋餡の自然で素朴な甘さは格別です。
今年は平ったい餅状の「月糕」もゲット。
 一緒に届いたマカオの英記特製の「荔枝紅茶」とともに味わいました。


 広東式の月餅ってことなら、今年は榮華の「三黄白蓮蓉」の白蓮蓉の味わい、風味がことの他、素晴らしかった。ですが、止めを刺すのが丸福食堂の雙黄蓮蓉。
 外側の糖皮は薄く、しっとりとしていて柔らかい。しかも、さくっとした触感で、ほろり、はらりと糖皮が脆く崩れていく。
 蓮の実餡は、しっとりとしているだけでなく、ねっとりとしていて、緻密で濃密。香港の蓮の実餡はほとんどが羊羹のように練ってこってりの弾力があったりしますが、丸福食堂のは滑らかで、舌の上で餡が溶けていきます。
その味、風味は洗練を極めたもの。品格があって奥深く、なんと言っても官能的。厳選されたクセのない鹹蛋の美味も他に見あたらない。世界一の月餅です。
 そんなことから中性脂肪過多なんぞ忘れて月餅ぱくぱく。うちのカミさんもやめられなくて、体重が一気に増加と嘆くことしきり。ならやめればいいのに。けど、やめられませから、旨い月餅は。
 で、肝心の中秋の名月、デジカメ携え、深夜の街を徘徊。ところが、今年は夜空を見上げても曇り空に覆われていて拝めずじまい。デジカメのシャッターを切っても写っていたのは真っ暗闇ばかり。
画面の端っ子に道端の木々のテッペンの連なりが写っておりました。